第11回委員会について
開催概要
- 日時
- 平成27年3月9日(月) 14:00~16:00
- 場所
- 平城宮跡資料館 講堂
- 出席委員
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委 員 6名(欠席5名)
行政委員 9名(代理委員1名)
検討資料
配布資料リスト
議事要旨
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議事
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(1)第一次大極殿院復原研究について(奈良文化財研究所)
前回の委員会以降の研究の進捗状況と課題について、①瓦、②地形、③彩色・金具、④木部の4項目に分け説明が行われた
この意見に対し事務局より次のように回答した。
- 突起付磚が3 段で安定するかかなり議論した。平安時代の記録から、嵐では倒れるぐらいの構造であり、現代で考えるほどしっかりした構造ではないと思うが、復原整備の際は、しっかりさせるよう考えていくことになると思う
- 回廊屋根の入隅にできる谷の排水は、築地回廊が梁間2 間分と比較的屋根面積が大きく、通常の平瓦1枚では排水しきれないと思うが、奈良時代の出土遺物などから、通常の平瓦1枚と考えざるを得ない。復原整備の際は、瓦の下に銅板を敷くことになると思う
- 円弧磚は正円だと考えられるが、復原すると必ずしも正円になるわけではなく、逆にこれに合うような形を考えても正円になるわけではないが、穴の部分は大体径20㎝になると思われる。
- 円弧磚の出土遺物は割れており当初の形がはっきりわからないが、検討している形と大きく変わらないと思う。突起付磚は磚積擁壁の真下から2個出土しているので、この周辺で使用していたことは間違いないが、円弧磚は突起付磚とは少し違う場所から出土しており、所内検討会で検討し有識者にも聞いているが明確に役割が決まる案はない。
- 擬宝珠高欄親柱を深くすると磚積擁壁自体が垂直になってしまうため、約2~3段の深さと考えた。 この磚をどこまで下げるかという問題もある。
- 鴟尾はすべて金銅製である
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(2)復原整備設計報告(案)について
復原原案の研究から始まり、復原整備実施設計までの検討過程について説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 復原整備標高は、今までの議論が踏まえられており、特に遺構保存を最優先すると書かれているので、世界遺産としての対応もできるのではないかと思う。
- 本委員会で議論を重ね、築地版築の復原が東楼までになったが、文章では本委員会は遺構保護を考えてゾーンⅢまでにとどめていた築地版築を、文化庁の強い要望で東楼までと変更を了承したと読めてしまう。二重スラブを導入することで、南門や西楼と同様に遺構に支障がないような築地版築復原にしたと明確に書いたほうがよい。文化庁も遺構保護を前提に審議していただいたのだと思うが、このまま読むと、文化庁はとにかく復原を優先させたように読めなくもない。
- 個別に検討し決められた各所の大きさや意匠が、最終的に全体的・美学的なバランスが取れているか微調整するのか。
- 驚くほど大きい大極殿の鴟尾を基準として、他の建物の鴟尾の大きさを決めると、他の建物は大極殿ほどの高さはないので、近くで見たときに全体のバランスを欠いた大きな鴟尾にならないか。
- 会場に置かれている模型は、鴟尾も実際の縮尺で作られているのか。
- 緊急車輌用通路については、復原整備の理想形とは少し異なるものになると思うので、通路の素材や形、特に進入口と進入可能範囲は示していただいたほうがよいと思う。
- 内庭広場の南北と東西にある排水路は、遺構上を暗渠で抜くなど、遺構に基づいて復原的に整備すると一項目入れていただきたい。
この意見に対し事務局より次のように回答した。
- 復原整備では、基本的に遺構保護は侵されることはないというのが前提である。二重スラブを導入することで、なんとか遺構に支障がない設計にしているので、誤解を生まない表現にする。
- 奈良文化財研究所による復原原案の検討過程でも、個別を検討しつつ全体も検討していると思っているので、個別の形は当然、第一次大極殿院地区全体を見ながらの設計になっていると考えている。
- 鴟尾は破片も出土していない。大極殿では朱雀門で小さいという意見を踏まえ大きくしたが、それでも小さいとご意見があり、どの大きさなら適当で、万人に満足していただけるかは極めて難しい。大極殿のような大きな建物であの大きさの鴟尾ということも踏まえた上で東西楼や南門などを格付けし、屋根の大きさなども考慮して大きさを考えた。
- 模型も実際の縮尺で作られているので、ほぼ忠実に復原整備された様子を感じられると思う。上、下と正面から見ると東楼は南門より少し北側にあり、実際どういう風に見えるかは難しいと思う。
- 復原整備計画では、車輌アクセスは基本的に北面回廊ができるまでは北側からになる。内庭広場の回廊際は、緊急車輌や車いすが通れるように設計している。礫敷の工事は最後のほうになる予定なので、礫の経年変化も含めてどの程度固まるのか実験して、工事が始まるときまでには考えをまとめていく予定である。
- 排水路は、技術的な検討として南門の東西に水が抜けるようにしている。具体的なことにはならないかもしれないが、排水についても一定の考慮をして内庭広場を整備するなどと加える。
欠席委員より事前に次のような意見があった。
- 内庭広場は基本に礫敷を考えているが、必要なときだけ車いす通路にマットを敷くなどの対策でもよいのではないか。
- 復原整備設計報告の軟弱地盤の報告に、平面図だけではなく縦断図も追加して欲しい。
- 発掘された大極殿前の礫敷は、礫がぎっしり詰まっていたような印象を受けたので、車いすはなるべく人力で対応しそのほかの整備は最小限として、礫を中心とした整備をして欲しい。
- 第一次大極殿院は、普通の人が出入りできない閉鎖空間であったことが伝わるような整備をして欲しい。
- 復原という想定の上にさらに補強する考えについては、やはり疑問がある。復原の論理が独り歩きしているような気がする。
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(3)今後の復原検討委員会について
本委員会は目的を達成し解散するが、今後の事業進捗のうえで、法令や構造補強、また調査研究成果に基づく新たな知見が得られた場合の復原整備への反映など、大きな変更があった場合はご意見を伺うため引き続き委員には指導していただくことが了承された。
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(4)その他
本日のご意見を元に「復原整備設計報告(案)」を修正し、委員長のチェックを受け内容を確定させること、平成27年度に復原整備設計報告に基づき、文化庁の手続きや、建築基準法の手続きを準備し、今後は仮設物の施工に着手していくことが報告された
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閉会
国土交通省を代表して、近畿地方整備局建政部長の植田よりあいさつがあった。
以上
各委員より次のような質問・意見があった。