第8回委員会について
開催概要
- 日時
- 平成25年2月25日(月) 14:00~16:30
- 場所
- 公益財団法人文化財建造物保存技術協会会議室
- 出席委員
-
委 員 8名(欠席3名)
行政委員 7名
検討資料
配布資料リスト
議事要旨
-
議事
-
(1)地耐力精査の検討
復原建造物の構造検討のため、第一次大極殿院地区の地盤について既往地盤調査データの解析による地耐力の説明が行われた。また、地耐力に応じたゾーン別の築地回廊の仕様が提案された。
この意見に対し事務局、及び奈良文化財研究所より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 既往地盤調査データは、調査年度や実施主体が異なっているため、平成21年度に全てのデータの検討がされていないと考えられるものを不採用とした。
- ゾーンⅠの屋根仕様「本瓦葺型金属葺」は、銅板葺で本瓦葺の形をしたもので、色味は可能な限り本瓦葺に近づけるよう黒色または鼠色を考えている。
- ゾーンⅠに位置する西面回廊の遺構は、北へ向かうにつれ、少しずつ西側にずれて沈下していることが発掘調査とボーリング調査で確認されている。おそらく奈良時代初頭に御前池をよく搗き固めず単に土を積んだためだと思われる。
- ゾーンⅠの軟弱地盤への復原には側方流動や沈下が起こりうるので、元の状態に戻せるような機構の導入、可能な限りの軽量化による施工などが考えられるが、この点については今後も相談させていただきたい。
- 北面回廊の遺構は残っていないが、奈良時代後半に当位置にあった建造物の遺構から総合的に判断すると、西側に地盤がずれて落ち込んでいることがわかる。
- 南門と東西楼の復原は、基礎のみ鉄筋コンクリートの二重スラブ、上部は木造を原則と考えている。
- ゾーンⅡとゾーンⅢの築地回廊はどちらも本瓦葺で違いはほとんどわからない。ゾーンⅠの本瓦葺型金属葺はゾーンⅡと仕様が異なるが違いは少ないと思う。ゾーンⅠの地盤精査により金属葺の範囲を極力減らしたい。
- 築地回廊の施工方法の違いによる継ぎ目は、特にゾーンⅡとゾーンⅢの鉄骨造と版築の違いについては可能な限り角で切るようにしたい。瓦については、朱雀門は東側の南面大垣において、調査結果から瓦の大きさを途中から少し大きくしているがほとんど見た目には違いがわからないので、金属葺と本瓦葺でもこのような結果を目指したいと思う。
- ゾーンⅡの築地回廊は、上部構造が木造で、版築部分のみ鉄骨造で形を作るので、版築部分には鉄骨と土が混在しない。
-
(2)築地回廊の版築に関する構造実験についての報告
築地回廊の版築の構造について、既往研究成果や他事例から得られた知見、概略について説明が行われた。また、今回行われた材料施工試験結果、及びこれらか実施する振動台実験についての経過報告が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 外部炭素繊維シート補強の場合、外部に土が出てこないのか。
- 一般的に下地材料が異なると、地震時、筋交い部分に斜めの線が出ることがあるが、版築もその可能性はあるのか。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 通常通り施工した版築を炭素繊維の紐で縛り、鉄筋コンクリート基礎のアンカーと連結し、剛体変形をとめる工法をイメージしている。漆喰仕上げが前提の補強案なので、最終的には炭素繊維の紐は見えない。
- 版築は柔らかい岩のようなものなので、過去の振動台実験結果から、剛体変形をとめて振動させると版築の途中に横方向の亀裂が入り、その上部が浮くような壊れ方が典型のようである。
- 今回の試験体は長細い形態なので、目地で剥がれ割れることが想定される。今回の施工の判断基準は大地震でも倒れないことなので、多少ひび割れても、版築が浮かないように下から引っ張るため、鉄筋と竹、または炭素繊維の紐で外から縛り上げる工法をイメージしている。
-
(3)奈良文化財研究所による第一次大極殿院復原検討会における研究成果の報告
奈良文化財研究所で検討中の南門、地形、回廊について研究成果が報告された。
-
(4)平城宮跡第一次大極殿院の復原整備案(築地回廊基壇)の提示
平城宮跡第一次大極殿院の復原整備案について、平城宮跡の概要、既往調査研究などをふまえ、特に築地回廊基壇の復原整備案について説明が行われた。
(3)(4)について各委員より次のような質問・意見があった。
- 展示物の防護と見学者の落下防止のためのガラス壁の位置について、復原整備計画では雨落ち部分、今回は基壇に位置しているが、なぜ位置が変わったのか。
- 南北方向の地形が傾斜しているので、区画の寸法は水平投影した図面寸法と、地面に這わせた寸法が異なってくると思うが、その点は検討されたのか。
- 南門について、同じ宮殿の門である藤原京の門の判明点と不明点は何か。
- 南門、及びこれと同じく二重門の朱雀門について、復原の考え方の類似点、相違点は何か明確にしておかないと、朱雀門の復原自体が疑問視される場合があるので注意する必要がある。
- 門の検討方法について、寺院の門は柱間寸法の検討では参考外だが、屋根形式の検討では参考にされているので合理的な説明が必要と考える。
- 礫(れき)敷の部分は、大雨時にも対応できるような排水計画を考慮しているのか。
- 構造的な安定性を求めすぎると、文化庁が求めるオーセンティシティから離れていくが、材料や工法の信頼性を重視するならば、後の破損時の修理を想定した計画を検討が必要となると思う。今後は両者の折り合いをつけていくことが課題になると思う。
この意見に対し事務局、及び奈良文化財研究所より次のように回答した。
- ガラス壁は、展示物の保護ではなく見学者の落下防止柵なので基壇端に設置している。展示物は触れてもよい品物になると思われる。
- 水平投影図面と実測図面の違いはそれほど違いがない。
- 藤原宮の門との比較について、藤原宮の門は柱間寸法17尺とほぼ規格的。平城宮大極殿院は東門、西門、南門、北門で若干異なるが、三間門でも基本的にほぼ17尺等間という規則性を持っている。藤原宮との比較検討は今回の説明では割愛したが行っている。
- 朱雀門と比較した復原の考え方については、朱雀門は桁行梁行とも17尺等間だが、区画内の門は15尺等間のものが多かったため、後者を積極的に検討していくこととなった。
- 平安宮には大極殿院という区画がないので、平安宮から根拠となる要素を引用できなかったが検討内容と経緯は同じで、むしろ今回のほうが発掘遺構の類例と事例収集は多い。
- 寺院の門の参考の仕方については、屋根形式は文献から奈良時代当初のものがわかりにくく、奈良時代の資料等を用いた結果、寺院を根拠としたことになっているが、柱間寸法の検討でも寺院の中門や南大門の比較検討をしている。
- 最終的な決定にあたって、全てを同等に扱った根拠となる話は難しく、それぞれに根拠となる話を組み立てないと決定に至らなかった経緯もある。
- 院内広場の排水については、遺構と合致するわけではないが、既にパイプを設置し水を抜いており、ある程度排水できている。
-
(5)その他
西楼・西面回廊における展示、及びこれから建設予定の復原事業情報館について事務局より報告を行った。
この報告に対し各委員より次のような質問・意見があった。
- 今後、第一次大極殿院地区を活用する方から、礫(れき)敷では辛いという意見が当然出てくると思うので、遷都祭(天平祭)の参加者など、利用者へ礫(れき)敷となった経緯を説明し理解してもらう必要がある。
この意見に対し事務局より次のように回答した。
- 礫(れき)敷については、情報館の屋外展示で説明することを計画している。
-
-
閉会
- 今後の予定は、築地回廊基壇をなるべく早い着工を目指しているので、まず文化庁の復元検討委員会で審議していただき、上部構造については年度末から年度明けにかけ復原整備案が固まっていくと思うので、次回委員会でまたこの点について審議していただきたいと思う。
- 次回委員会は6月、7月頃に開催したいと事務局では考えている。
以上
各委員より次のような質問・意見があった。