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六甲山におけるナラ枯れ被害と対策

カシノナガキクイムシが病原菌を伝播することによって起こる、樹木の伝染病です。

 カシノナガキクイムシ(以下、「カシナガ」という)が媒介するナラ菌※1の影響により、樹木が水を吸収できなくなり、急激に枯死します。
 主にコナラ、ミズナラ、アベマキ、アラカシなどのブナ科の樹木が感染します。

図:ナラ枯れ発生のメカニズム
▲ナラ枯れ発生のメカニズム

 カシナガの成虫は6月〜8月頃にナラ類に穿入※2します。まず穿入した雄がフェロモンを拡散することで、多くの成虫が集中的に穿入します(この現象をマスアタックといいます)。8月〜9月頃、ナラ菌の繁殖により、穿入を受けた木が水分不足となることで枯れが発生します。カシナガはナラ菌を餌として、木の中で繁殖し、幼虫もナラ菌を餌として成長します。
 木の中で成長した幼虫は、翌年の6月〜7月頃に新成虫となって脱出します。

【カシノナガキクイムシ】

体長4〜5mmほどの甲虫で、日本在来種です。雌の背中にはナラ菌を運ぶ穴(菌のう)があります。木の中で餌となるナラ菌を媒介することで繁殖します。

図:カシノナガキクイムシ
図:カシナガの生活史と枯死発生時期
▲カシナガの生活史と枯死発生時期

※1 カシナガによって運ばれる病原菌で、ナラ枯れを引き起こす
※2 カシナガが木に穴をあけて、内部に侵入すること

 カシナガが穿入するのは、ブナ科の樹木全般です。六甲山では、コナラ、アラカシなど、合計17種類のブナ科の樹木が確認されています。この内、生育本数が多く、また大径木となって森林を形成している下表「主にナラ枯れ被害をうける樹種」の樹木が、ターゲットにされやすいと考えられます。ただし、ブナ・イヌブナはカシナガの侵入を受けますが、これまで枯死は確認されていません。

属名 種名 学名 感染 備考
クリ属 クリ Castanea crenata 感染する
シイ属 コジイ Castanopsis cuspidata 感染する
スダジイ Castanopsis cuspidatavar. sieboldii 感染する
マテバシイ属 マテバシイ(植栽) Pasania edulis 感染する
コナラ属 アカガシ Quercus acuta 感染する
クヌギ Quercus acutissima よく感染する
ナラガシワ Quercus aliena よく感染する
アラカシ Quercus glauca 感染する
ミズナラ Quercus mongolicavar. grosseserrata よく感染する
シラカシ Quercus myrsinaefolia 感染する
ウバメガシ Quercus phillyraeoides 感染する
ウラジロガシ Quercus salicina 感染する
コナラ Quercus serrata よく感染する
アベマキ Quercus variabilis よく感染する
ツクバネガシ Quercus sessilifolia 感染するが枯死しにくい
ブナ属  ブナ Fagus crenata 感染するが枯死しない
イヌブナ Fagus japonica 感染するが枯死しない

コナラ(落葉広葉樹)

六甲山全体に広がる落葉高木林の優占種。コナラ(落葉広葉樹)

アラカシ(常緑広葉樹)

表六甲の山麓に広がる常緑高木林の優占種。アラカシ(常緑広葉樹)

アベマキ(ブナ科:落葉広葉樹)

コナラと共存。深く割れた、コルク質の幹が特徴。アベマキ(ブナ科:落葉広葉樹)

スダジイ(ブナ科:常緑広葉樹)

再度山大竜寺などに残る照葉高木林の優占種。スダジイ(ブナ科:常緑広葉樹)

アカガシ(ブナ科:落葉広葉樹)

摩耶山天上寺跡などの高海抜域に大木があります。アカガシ(ブナ科:落葉広葉樹)

ウバメガシ(常緑広葉樹)

六甲山の西端、鉢伏山付近にまとまってあります。ウバメガシ(常緑広葉樹)


 六甲山系ではコナラのナラ枯れ被害が最も多く、次いでアベマキ、クヌギといった落葉広葉樹に多い傾向にありました。
他にもアラカシ、ウバメガシなどの常緑広葉樹でも被害が確認されています。

図:六甲山系でナラ枯れ被害を受けた樹種の本数
▲六甲山系でナラ枯れ被害を受けた樹種の本数((現地踏査結果)平成25年〜平成29年))

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