六甲SABO
HOME > 六甲山におけるナラ枯れ被害と対策

六甲山におけるナラ枯れ被害と対策

V.ナラ枯れの被害対策

 六甲砂防事務所では、ナラ枯れ被害が確認された被害木に対し、今後の被害拡大を防止するため、カシナガの生活史に合わせて被害対策を実施してきました。
 被害の発生から収束までの対策計画を策定しており、ナラ枯れの被害対策は、樹林整備とも連携しています。

▼カシナガの生活史に合わせた被害対策
図:カシナガの生活史に合わせた被害対策

【六甲山系での主な被害対策】

図:粘着シート内向き設置

[粘着シート内向き設置]

 マスアタック被害木や伐倒・くん蒸できないナラ枯れ枯死木を対象として、粘着シートの粘着面を内側に設置して、脱出してくるカシナガを捕獲します。

図:伐倒・くん蒸処理

[伐倒・くん蒸処理]

 ナラ枯れ枯死木及びマスアタック被害木を対象として、伐倒後、玉切りにして密封し、殺虫剤にて燻蒸処理をします。

図:殺菌剤樹幹注入

[殺菌剤樹幹注入]

 被害生存木やおとり木に殺菌剤を注入し、ナラ菌の繁殖を抑えることにより、枯死を防止します。
 殺菌剤は、注入後2年間効果を発揮します。

図:カシナガ捕獲トラップ

[カシナガ捕獲トラップ]

 カシナガの穿入孔や穿入孔から出るフラスを確認した場合、カシナガのマスアタック防止を目的として、トラップを設置し、フェロモンに誘引されて集まるカシナガを捕獲します。

図:おとり木トラップ

[おとり木トラップ]

 カシナガをおびき寄せる誘引剤(人工フェロモン剤およびアルコール)と、カシナガ捕獲トラップを組み合わせて設置することで、カシナガを大量に捕獲します。
 殺菌剤樹幹注入も一緒に行うことで、おとり木の枯死を防ぎます。

【六甲山系での被害対策の工夫】

 各被害対策は、六甲山の急峻な地形などを踏まえ、効果検証と対策方法の改善を繰り返し、工夫して実施しています。
 例えば、粘着シートは、当初は地上高4m程度まで設置しており、設置の労力や作業の安全面などが課題でした。そこで、設置高さ毎にカシナガの捕獲数を比較することで、高さ2mまでの設置が最も効率的かつ効果的な設置高であることがわかり、高さ2m未満で設置することになりました。
 他にも、丸太おとり木トラップの設置や粘着シート外向き設置なども試行しながら、六甲山系に適したナラ枯れ対策を選定し、実施してきました。

図:被害対策の試行
▲被害対策の試行
図:粘着シート設置高別のカシナガ捕獲数(平成27年)
▲粘着シート設置高別のカシナガ捕獲数(平成27年)

【六甲山系でのナラ枯れ対策の効果】

 ナラ枯れ対策を実施したエリア(A地区)と、実施していないエリア(B地区)でナラ枯れ枯死木の本数を比較したところ、ナラ枯れ対策を実施した場合、未実施の場合と比べて被害の激害化※1が抑えられ、ピークアウトが早まる傾向がみられました。
 この結果から、ナラ枯れ対策が効果的であり、対策を講じることでナラ枯れによる森林被害を抑えることができると考えられます。

図:ナラ枯れ対策実施エリアと未実施エリアの激害地の割合
▲ナラ枯れ対策実施エリアと未実施エリアの激害地の割合

※1 1haあたりの枯死木本数が4本以上

「六甲山におけるナラ枯れ被害と対策」トップページ

ページトップ