第9回委員会について
開催概要
- 日時
- 平成25年10月11日(金) 14:00~16:30
- 場所
- 平城宮跡資料館 小講堂
- 出席委員
-
委 員 7名(欠席4名)
行政委員 10名(欠席1名)
検討資料
配布資料リスト
-
議事次第
-
出席者名簿
-
第8回第一次大極殿院建造物復原整備検討委員会 議事概要
-
資料1-1
復原整備案 全体平面図・全体立面図
-
資料1-2
整備高さの設定
-
資料1-3
版築に関する構造実験結果および復原整備案への提案
-
資料1-4
地耐力と復原整備案
-
資料1-5
構造面から見た整備項目
-
資料1-6
仕上げの仕様から見た整備項目
-
資料2-1
基壇整備工事について
-
資料2-2
平成25年度予定事業
議事要旨
-
議事
-
(1)奈良文化財研究所による第一次大極殿院復原検討会における研究成果の報告
前回の委員会以降の検討事項と実施計画に向けての課題について、①回廊・地形、②南門、③東西楼、④瓦・磚の 4 項目に分け説明が行われた。この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- Ⅰ期の鬼瓦が出土しているが大きさに大差はない。大棟には大きな鬼瓦、降棟には小さな鬼瓦となるが、降棟かどうかも含め検討中である。
- 鴟尾の向きは、絵巻物では 2 方向に出ているが、山田寺の場合は 45 度方向にひとつ取り付いている。中国で見られるものもすべて 2 方向なので 2 方向が有力と考えられるが、発掘根拠がないため検討中である。
- 柱間の根拠としていた門の遺構は、1982 年の発掘調査報告書の見解を元に、それ以降、門と考えていたが、再度、遺構の原図より検討した結果、整合しない点がみえてきて、そもそも門なのかただの穴なのか明確に説明できない状況である。
- 中国の楼閣の事例で入母屋造があると聞いた。現時点では寄棟造としているが、建築史専門の先生から違和感があるとの指摘も受けているので、引き続き検討し決めていきたい。
- 楼閣は、振れ隅でも検討したが、振れ隅で柱筋を揃えようとすると棟の長さとのバランスが難しい。現在、振れ隅の建物は蔵のみなので、同等に扱うのは躊躇される。
-
(2)平城宮跡歴史公園第一次大極殿院建造物復原整備案について 復原原案に基づき、実際に復原する復原整備案で、安全面や活用面を考慮すると当時と同じ 状態に復原することができない部分について、地耐力、構造面から見た整備項目、仕上げの仕 様から見た整備項目の点から説明が行われた。
ア.整備高さの設定 各委員より次のような質問・意見があった。
- 東面回廊は、遺構面と支障する部分が生じるため基壇位置を高く設定するとのことだが、東西回廊で高さが違い、回廊が左右対称でなくなることに違和感は生じないか。
- 地面の勾配は西側へ下がり、さらに東面回廊の基壇が1m以上上げられると、回廊で区切られ空間は南門から入った時、ねじれて見えるのではないか。模型等で実際の見え方を検討して欲しい。
- 雨水および雨落ちの排水処理はどうするのか。雨落ち部分は地面が相当削れると思われる。
- これまでの集中豪雨時の雨水の排水状況を教えて欲しい。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 東西回廊の高さは、現状の整備においても復原整備案と同様の高低差があるが、左右非対称の違和感はそれほどないと思う。しかし復原整備案で東面回廊はさらに高くなるため、模型等で確認することを検討する。
- 回廊部分の雨落ちは、回廊内側に広場の礫敷と同じ仕上げの雨落ち溝が発掘されているので、それを復原する。また中心に大きな溝ができることになるのでそこでも処理する。また、東 西方向の大きな溝が発掘されており、西側が溢れないよう東側への排水も検討していく。
- 集中豪雨時の排水の状況については、台風 18 号時、朝堂院広場北側の南門へ行く東西方向の苑路が 30cm 位冠水し、特に池がある北側がひどかった。また、朝堂広場南東角付近も冠水した。
イ.構造面から見た整備項目 各委員より次のような質問・意見があった。
- 上部構造の補強について、版築には何らかの補強が必要だと思う。現存する創建当初の姿をもつ建造物のほとんどには後世に何らかの補強が行われている。明治以降は鉄骨補強等の大胆な補強も見られるが、近年は元の造りを尊重した後付の補強をする傾向にある。文化財の復原においてもできればこれまでの工法を踏襲しながら見えない部分に補強を加え、補強が見えても元々はなかったとわかるような補強を行うことが望ましい。今回の南門、東西楼、回廊の復原整備についてもある程度の補強が必要なことを予め本委員会で了解いただきたい。
- 外部の炭素繊維シートの補強では、表面はどのような状態なのか。漆喰はその上に直接塗るのか。漆喰仕上げは下地が異なると割れやすくなるので、中に芯を入れて補強した方がもとの工法に近いのではないか。
- 内部に鉄筋の芯を入れて補強する工法については、鉄筋と土になるので、収縮膨張率が及ばず、また、鉄筋の回りは土を搗き固めにくくなり、充分な強度が得られないこともあるのではないか。
- 版築の施工法について、専用の機械式施工の道具を製作し検討したのか。
- 地耐力と復原整備案について、地耐力が低い場所では基礎を二重スラブにして入場制限等を行うという説明だったが、動線計画にも影響する。炎天下や雨天時には回廊に人の流れが集中するうえ、入場制限が必要となると人の流れが滞るだろう。どの程度の積載荷重制限にせざるを得ないのか。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 外部の炭素繊維シートによる補強は、10cm 幅の帯をかけ基礎にアンカーで止める。現実にはエポキシ糊で固めるので最終層に砂粒を付ければ、少しの土の下塗りの上に漆喰を塗ることができる。
- 下地境目での漆喰の割れ対策として、貫伏せのようなものを施す必要がある。表面または芯での補強かの選択は、どちらの補強効果も充分なので、議論して選択していきたい。
- 内部鉄筋と土の付着については、今回の実験では鉄筋を竹で覆い、中にモルタルを付けて付着性能を高めた芯を使用したが、結果はモルタルと竹の付着部分が弱かった。一方、下部の鉄筋を定着プレートにより上部を押さえる補強を試した。付着に期待せず、鉄筋を上部まで伸ばし定着プレートで上部を押さえ込む方法が一番よいのではと考えている。
- 版築施工の機械化については、今回は市販の機械で施工能力を調査し、専用の機械を検討するところまで至っていない。必要であれば新しい道具の検討を行う。
- 地耐力が低い場所の積載荷重は、住宅の半分程度を目安にと考えている。地耐力が低い場所 では苑路の幅を細くすることにより、荷重を減少させること等を考えている。
ウ.仕上げの仕様から見た整備項目 各委員より次のような質問・意見があった。
- 一般の人が見る時、鴟尾の大きさが非常に気になる。現在の大極殿の鴟尾は少し大きい印象がある。設計の問題だと聞いたが、全体を見たときに個別のデザインは良くてもバランスが大切だと思う。
この意見に対し事務局および委員長より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後 の検討を進めることとなった。
- 鴟尾の大きさについては、復原原案に倣うので奈良文化財研究所の方へ検討をお願いしたい。大極殿の鴟尾は、発掘された同時代の鴟尾から検討したが、小さいのではという指摘もあり、建物とのバランスから現在の大きさにした経緯がある。
- 平城宮で鴟尾が出土していないのは、瓦製ではなく金銅張りではなかろうか。大きさも厳密にはわからない。議論を尽くしてこの委員会で責任を持つくらいの考え方で進めていただくしかないと思っている。
-
(3)文化庁委員会経過報告
3 月および 9 月の文化庁の復元検討委員会で諮られた、回廊の平面計画と基壇、回廊の上部構造を含めた平面計画の見直し、整備基壇高、先行整備する基壇工事などについて報告が行われた。 -
(4)その他
ア.基壇整備工事について
回廊の基壇の整備工事が今年度に一部着手の予定であること、今年度の予定事業として復原事業情報館の新築工事、第一次朝堂院地区整備工事、休憩所新築工事が予定されていることが報告された。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 平成 25 年度事業予定の復原事業情報館は必要だと思うが、その期間にもよるが仮設なのか。 ・新設予定の復原事業情報館と、奈良文化財研究所の平城宮跡資料館、平城京歴史館があるが、 設置の主旨や展示も違うので、パンフレット等で各々の施設の住み分けや、大極殿院地区全体で一体的に見学者を受け入るよう配慮してもらいたい。
- 7 月から 9 月は非常に暑いので、見学者に対して仮設でもいいので何らかの設備を設置し、遺構の見学が大変だ、と印象付くことを回避して欲しい。
- 雨水の排水処理の問題については、今後、将来の雨量は従来より、恐らく 1、2 割増しになると思われるので、割増したシミュレーションを行い、どう処理するか検討して欲しい。
この意見に対し事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 復原事業情報館は、第一次大極殿院地区が完成すれば必要なくなるので仮設として建設する。休憩所は公園施設として本設で検討している。
- 暑さ対策については、平城宮跡に関連する組織で構成された五者会議でも大きなテーマとして扱われており、今後も引き続き検討してきたい。
-
-
閉会
- 次回委員会は、来年の2月頃に開催したいと考えている。皆様にはまた日程調整の連絡をさせていただく。
以上
各委員より次のような質問・意見があった。