第6回委員会について
開催概要
- 日時
- 平成24年5月21日(月) 14:00~16:00
- 場所
- 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所 小講堂
- 出席委員
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委 員 8名(欠席3名)
行政委員 9名(欠席2名)
検討資料
配布資料リスト
議事要旨
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「国営平城宮跡歴史公園第一次大極殿院建造物復原整備計画」について
平成23 年度に作成した「国営平城宮跡歴史公園第一次大極殿院建造物復原整備計画」の概要が説明さ れ、内容が再確認された。
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議事概要
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(1)検討スケジュール
平成24 年度の検討委員会のスケジュールと検討内容について、平成25年度以降の整備手順を含め説明が行われた。
この意見に対し事務局より次のように回答した。
- 平成24年度は、本委員会で検討・承認された個別の建物ごとに現状変更協議を進め、例えば基壇だけ現状変更手続きが整えば、他に先立ち平成25年度末に施工することも可能と考えている。
平成24年度は、基本設計の完了を目標に本委員会で審議を進めることが確認された。
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(2)施工工程
基壇及び内庭広場並びに塼積壇を先行施工することについて、利点と留意点を含め説明が行われた。 また類似復原建造物の事例として朱雀門と第一次大極殿の工事期間を提示した。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 「現在ある仮設の修景柵」とは、正殿の周囲の鉄柵のことか。
- 基壇を先行施工する場合、基壇の構造は上部構造により変わるのではないか。上部構造の設計に変更が生じた場合、先行施工した基壇に再工事の必要が生じないか懸念される。
- 礫敷きの施工が回廊の後になる場合、回廊の基壇が礫敷きの施工の障害にならないか。
- 水仕舞はどのようになるのか。
- 回廊(基壇)と雨落溝は一体だと思うので、礫敷きと基壇とどちらと一体に施工するのか検討してほしい。
- 先行施工の基壇のみ露出した未完成の期間が約10 年もあるのが気にかかる。古代国家の中枢であり国家の威信をかけた空間が、衰亡の象徴や周辺住民に資金不足の印象を与えてしまわないか懸念さ れるので、可能ならば短期間で完成するほうがよいと感じる。
- 修景柵は、基壇の次に回廊が施工されるまで中途半端な形で残るのか。
- 正殿の周りを囲んでいる管理柵は残るのか。
これらの意見に対し事務局より次のように回答した。
- 正殿の周囲の鉄柵よりさらに外周の木製柵が「修景柵」である。
- 基壇の設計は、上部構造を含めた回廊全体を対象とした構造計算を元に行うので、上部構造の変更に合せ設計を進める。
- 基壇は一度に全て施工できないので、内庭広場の礫敷きの施工と並行して行えると考えている。
- 排水も考えていく必要がある。
- 遺構では回廊の内側に溝があり、別に排水の暗渠が作られている。(奈良文化財研究所)
- 正殿と朱雀門の施工期間の事例と予算等から、厳正復原を目指している以上、東西楼と南門の復原も相応の期間がかかると思われる。基壇だけの状態で10 年以上になると思うが、施工過程や姿を見てもらうのもよいと考える。
- 基壇だけの施工も含め段階的な施工になるが、最初の施工時に修景柵を全て撤去することはないと考えている。
- 奈良文化財研究所の研究成果や、修景柵の撤去部分の活用にも関わるが、撤去の必要が発生すれば撤去せざるを得ない。
- 正殿の周りを囲んでいる管理柵は今後も残る。
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(3)築地回廊の整備と版築構造実験について
築地回廊の整備として資料3-1から資料3-3により地盤状況に応じた基壇および回廊の構造形式の説明が行われ、版築構造実験として資料4により実験計画概要の説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 構造計算では、定量的に評価できない構造要素は採用しない。定量的な評価ができる構造要素を採用した例として、朱雀門は板壁および転倒復元力、正殿は免震構造を採用している。版築はほとんど研究成果がないので、構造実験を行い版築の強度を定量的に評価できれば、復原設計で耐震設計ができ、性能や必要性を再検討することができる。
- 現在は構造実験結果の数値解析で多くのことが予測できるので、版築の応答結果を事前予測し、予測と結果の数値の違いを検証するとよいと思う。
- 耐震設計では、地震の波形により構造物の揺れ方も異なる点を考慮し基本方針を固めてほしい。
- EPSを土木構造物の耐用年数より長期間使用する場合の安定性について議論が必要だと思う。
- 正殿は免震構造なので、想定する地震波形でいくつも実験を行っていると思う。
- 昨年の東日本大震災により、地震波形の数値が大幅に見直されているので波形の再検討が必要だと思う。
- 全国には史跡整備で築地塀を復原している例があり、志波城も地盤がよくない場所に復原していたと思うので、志波城の東日本大震災の被害状況を参考にしてはどうか。
- 復原建造物が、国内外から世界遺産の構成要素として厳正復原を前提として見られたときを考え、ゾーンⅡの地盤で、もう少し本格的な築地塀の復原ができないか検討して欲しい。
- 築地塀は全て木材でなく部分的に鉄骨の柱を使うのか。
- 築地塀の仕上げが漆喰の場合、現代施工法でも漆喰仕上げが可能だと思う。仕上げについては厳正復原と現代工法を全く同じに見せるのか、素材を変え区別して見せるのかなどの点についてぜひ考えてほしい。
- 版築は、奈良時代だと土を積んでいくだけだと思うが、少し時代が下がると須柱という添柱が出てくる。構造実験で版築の強度が満たせない場合、次善の策で添柱のような補足材を入れる可能性もあると思う。法隆寺や平安京には必ず須柱が立っている。
これらの意見に対し奈良文化財研究所・事務局より次のように回答した。また、上記の意見を参考に今後の検討を進めることとなった。
- 築地塀の構造に関しては、まだ復原原案が出ていないので設計に関して決定した事項は何もなく、取りあえず木材で施工できるという想定の図面を出している。地盤が弱く荷重を軽くする必要が出てくれば他の方法を検討する必要がある。
- 版築の外壁の仕上げは未定だが、おそらく方向性として漆喰だと思う。
- 添柱は第Ⅰ期、第Ⅱ期の遺構からは出ていない。削平されている可能性は否定できないのでなかったとは言えないが今後の課題である。
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(4)奈良文化財研究所による第一次大極殿院復原検討会における研究成果の報告
奈良文化財研究所で進捗中である、復原原案の研究成果と今後の課題について説明が行われた。
各委員より次のような質問・意見があった。
- 東の築地回廊の門が1 カ所見つかったのは築地塀の部分で、掘立柱が見つかっているということだが、その礎石の柱間は15.5 尺か14.5 尺で通っているのか。
- 築地塀の潜戸の柱間が12 尺というのは他の部分と比較して狭いのか。
- 回廊の柱間は同じだが、築地の柱間だけ狭くなりくぐり戸になっているということか。
これらの意見に対し奈良文化財研究所より次のように回答した。
- 北から柱間の数値をおった場合ではないと柱間が合わないが14.5 尺である。
- 築地塀のくぐり戸の柱間が12 尺なのは他の部分と比較して狭い。
- 築地の柱間だけ狭くなり潜戸になっている。
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(5)その他
事務局より、9 月頃から文化庁の「復元の取り扱いに関する専門委員会」にも本検討委員会で検討した整備内容を諮っていきたいと考えているため、復原原案の検討状況を踏まえ、第7回委員会は8 月頃に開催したいとの連絡を行った。
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以上
各委員より次のような質問・意見があった。