森の世話人シンポジウムの要旨
参加団体
【森の世話人】 計23団体31名
(市民団体)
NPO法人黄河の森緑化ネットワーク、兵庫県勤労者山岳連盟、いたやにすと、一般社団法人ブナを植える会、六甲ジョウビタキの会、金鳥山自然環境保護・育山協議会、パナソニック電工松寿会阪神地区・フォレスター松寿、ほくらぐるーぷ(山林ボランティア)、兵庫県山岳連盟、NPO法人Peace&Nature、天風会神戸賛助会、ガールスカウト兵庫県第51団、ウエルネスの森を守る会、ほくら〜ととや森の世話人倶楽部、CoPORT
(企業)
住友ゴム工業株式会社、東亜バルブエンジニアリング株式会社、株式会社新井組、UCC上島珈琲株式会社、コベルコシステム株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、株式会社神戸製鋼所、日本eリモデル株式会社
要旨
1:開会の挨拶
六甲砂防事務所石塚所長より、日頃の森づくり活動やシンポジウム出席へのお礼、本日のシンポジウム開催の主旨説明とともに開会の挨拶がありました。
2:基調講演 「樹木根による表層崩壊防止効果とは」
兵庫県立農林水産技術総合センターの藤堂千景さんより、樹木による災害防止機能についての基調講演が行われました。
(主な内容)
- 樹木の表層防止機能は、発生源で発揮する力と崩壊の流出阻止の働きに大別できる。
- 根系の土壌緊縛力が表層崩壊防止として機能している。
- 最近の研究で、直根のみでなく、水平根も崩壊防止機能に重要とわかってきた。
- 土壌緊縛力は引き抜き試験などを行い測定している。
- 引き抜き抵抗力は根の直径で決まり、太いほど強い。また樹種によって差がある。土壌による差異は少ない。
- 根の量を増やし、太さを太くし、根が強い樹種を残したり植えることで表層崩壊防止機能を高めることができる
- 豪雨で山から流出した流木が橋りょう部や渓流を閉塞すると、二次災害が起きやすい。流木を山から出さないことが必要。
- 緩傾斜地の立木が土砂や流木を補足している。兵庫県ではこれらの機能をもった森林を「災害緩衝林」として整備をすすめている。
- 倒木や流木を阻止するためには横向きの外力に強い樹木(胸高直径が大きい、樹種の特性)を育てる必要がある。
- 整備効果を見るために複数の森林モデルを模型水路で実験してその効果を確認した。
- 崩壊防止機能の強い樹種を選んで間伐や植栽を行うほか、木の根元を踏み固めないなど、根にも気を配る生活を送ることで減災に貢献できる。
3:森の世話人によるリレー発表
森の世話人の4団体から各団体の特徴や活動状況、今後の課題等について発表が行われました。
NPO法人黄河の森緑化ネットワーク 矢野 正行さん
最も早くから活動している団体の一つ。中国の緑化活動も行っている。国際交流にも努めており、インドネシアからの留学生も植樹活動に参加してくれたことがある。
ウエルネスの森を守る会 山本 純さん
CSRの一環で活動していたが、会社の支援がなくなったため、有志で団体をたちあげて活動を継続している。植樹では苦労しているが、大きく育ちつつある苗木を見るとうれしい。
住友ゴム工業株式会社 石田 茂さん
全国でGENKIの森づくりをすすめている。六甲でも2009年から植樹や下草刈り、常緑樹伐採等の活動を行っている。今後、地域をまきこんだ活動を展開していきたい。
東京海上日動火災保険株式会社 吉田 昇さん
最初は少人数だったが、参加者が増えてきた。中心となるのは元自衛隊の方々で心強い。参加者が心筋梗塞で倒れた時にドクターヘリを呼んだことがあり、道標の把握は大事。
4:旗の贈呈式
森づくり実施要領に基づいて精力的に活動されている26団体を対象に団体名の入った横断幕の贈呈式がありました。代表で平成29年の活動回数が最も多かったコベルコシステム株式会社が旗をうけとり、お礼と今後の活動に対するさらなる意欲を述べられました。
【贈呈団体】
NPO法人黄河の森緑化ネットワーク、兵庫県勤労者山岳連盟、いたやにすと、一般社団法人ブナを植える会、六甲ジョウビタキの会、カネディアン・アカデミイ、夙川ボーイスカウト育成会、パナソニック電工松寿会阪神地区・フォレスター松寿、ほくらぐるーぷ(山林ボランティア)、兵庫県山岳連盟、NPO法人Peace&Nature、天風会神戸賛助会、ガールスカウト兵庫県第51団、ウエルネスの森を守る会、ほくら〜ととや森の世話人倶楽部、住友ゴム工業株式会社、公益財団法人ノエビアグリーン財団、大和ハウス工業株式会社、東亜バルブエンジニアリング株式会社、アシックスユニオン・株式会社アシックス、株式会社新井組、UCC上島珈琲株式会社、コベルコシステム株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、株式会社神戸製鋼所、日本eリモデル株式会社
5:「交流の森」について
森の世話人活動支援事務局から「交流の森」について、設置した目的や活動状況、これから目指すべき姿の説明がありました。現在は市民への広報にも力をいれていることや、景観を意識した整備の必要性についても言及していました。
6:「Forestgenic〜交流の森〜」について
六甲砂防事務所より、昨年12月に開催した「交流の森×甲南女子コラボ企画」について、企画の背景や甲南女子大学松村ゼミ生によるイベントの運営状況(森づくり体験をふまえてイベントを企画、インスタグラムを使った魅せる発信、室内と屋外のスケール間の違いから飾りつけに苦労したことなど)が紹介され、学生ならではの発想がうまくいかされ成功裏に終わったことが報告されました。
7:意見交換
3班にわかれて意見交換を行い、最後に班で出た意見を発表しあい、情報の共有につとめました。
1班 「長期間、活動を継続できるコツ」に関する意見交換
●森づくり以外で楽しめる企画を立案する意見
- きれいな花の咲くササユリの生育環境を守るための活動という目的を掲げる。
- 明るく気持ちよくなった成果を見せるなど、活動の結果を分かりやすく提示する。
- 活動後の花見会や食事会など、若い世代も参加しやすい工夫をする。
- 森づくり活動だけではなく、木材を使ったワークショップなど、楽しみを持つことが大事。
- 活動の本来の目的(砂防)をじっくりと説明したり、環境問題と活動の関係について説明する。
- 団体によって構成メンバーが異なることに留意し、構成会員の好みに合った組織運営が重要。学生の多い団体なら、森づくり活動に絡めて企業と引き合わせることなどが喜ばれる。
●会員の負担を軽減する意見
- 活動費用の一部を所属する企業が支援する。
- 時間を限定した活動とするなど、無理がないような活動プログラムとする。
- バスのチャーターなど、会員が活動に参加しやすい工夫をする。
●その他の意見
- 会の活動テーマを決めて、それに沿った活動を行う。
- 子供向けイベントを行ない、子供たちが大人になった時に帰ってこれるように種まきをしておく。
2班 「参加者を増やす工夫」に関する意見交換
●参加者を増やしている取組の紹介
- 参加者を増やすにはPRが重要で、大学・高校には社会貢献活動窓口があったり、ホームページなどで参加募集を載せてくれるところがあったりするので、そういったところにチラシ・カタログ・ポスターなどを作成して配布する活動を行っている。
- CSRとして行っている場合には、社内メールで呼びかけるのが一般的であるが、活動の交通費を支給すると効果があり、関心の有りそうな人に直接声を掛ける「一本釣り」も有効である。
- 活動団体において、参加者が増えた成功事例があれば、ニュースレターを活用するなどして、情報共有をはかっていただきたい。
●ハイカーにPRする意見
- 活動地の付近を多数の登山客が通行しており、地元の人や登山者を取りこむことも考えたい。興味のある人には同僚がいることも考慮すべきである。
- 登山者へのアピールとして、六甲山に掲示板のようなものを設置することはできないだろうか。既存の活動地の看板を宣伝用に活用することも考えるとよい。
●その他の意見
- 参加者を増やすにあたって、森づくりはとても長い期間がかかる取り組みであり、担い手には世代交代が必要。
- 活動には、健康に留意するとともに、楽しさも必要と考えられる。活動地に花を植えたり、リースづくりを行ったりするのは良い取り組みである。森づくりに付加できる活動があるとよい。
3班 「森づくり活動での安全をどう確保するか」に関する意見交換
●企画・運営段階で安全を確保する意見
- 活動開始前に体調を確認し、体調が悪い参加者がいれば無理に参加させない。
- 参加者の熟練度に合わせて、活動場所・活動内容の制限、日程を調整する。
- 事故が発生してしまった時を想定して活動場所の電波状況の確認、電話以外の連絡体制を決めておく。
- 活動場所の電話で正確に伝えられるように「通報プレート」を確認しておく。
- 主催者も参加者も無理をしない「勇気ある撤退」が重要である。
●説明の徹底で安全を確保する意見
- 注意事項(前日の体調管理、服装、危険な行為など)を事前に繰り返し説明する。
- 初参加者は危険に対する認識が甘く、薄着で参加するなど注意事項を繰り返し説明しても守らない人もいる。
- 注意事項を守らなかったときは自己責任であることを理解させ、危機管理意識を高める。
- 参加同意書への署名をお願いするのも1つの手段である。
以上
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