第7回六甲山系グリーンベルト 森づくり講習会 要旨
参加団体
【森の世話人】 計15団体25名
(市民団体)
NPO法人 黄河の森緑化ネットワーク、兵庫県勤労者山岳連盟、獅子ヶ池を美しくする会、六甲ジョウビタキの会、専修学校 環境学園専門学校、夙川ボーイスカウト育成会、金鳥山自然環境保護・育山協議会、パナソニック電工阪神地区松寿会・フォレスター松寿、ほくらぐるーぷ(山林ボランティア)
(企業)
住友ゴム工業 株式会社、東亜バルブエンジニアリング 株式会社、清水建設 株式会社、株式会社 新井組、コベルコシステム 株式会社、株式会社 神戸製鋼所
要旨
1:開会の挨拶
20日は六甲砂防事務所森東課長、21日は神野所長より挨拶がありました。
- 今年の梅雨は近畿地方では土砂災害はなかったものの、九州では大きな災害があり、改めて土砂災害の日頃からの予防が大切であると痛感している。
- カシノナガキクイムシによるナラ枯れの問題が近隣に広まっており六甲山でも注意が必要。
- 森の世話人が共通で森づくりを行う交流の森というものを考えている。各団体の交流、技術の向上等の場所となることを期待している。
- ワークショップの開催予定と参加のお願い。今後の整備や管理のあり方を検討するため、また、これまで行ってきた事業の効果を多面的に評価するために、六甲山に関わりが深い皆さんと情報交換をするワークショップを開催したいと考えている。
2:講習@ モニタリング調査結果報告
昨年の春より事務所で実施している各団体の活動地における生物のモニタリング調査結果について事務局より説明がありました。
(主な内容)
- 植生調査の方法及び結果(図)の見方と植物相リストの説明。
- 哺乳類調査や蝶類調査の方法及び結果の見方の説明。
- コウモリガによる苗木被害とその対処方法についての説明。
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講習の様子 |
3:講習A 森づくり計画立案の基本的考え方
森づくりの計画の立て方について事務局より説明がありました。
(主な内容)
- 森づくりの計画を立てる意義について。
- 森づくり計画書の位置づけの確認とその記載内容についての説明。
- 市民でも活動地の現況(林内の明るさや林床の状況)を把握することで、森のおおよその状況と目標とすべき森の姿を設定することが可能となる。
- 植生や地形、メンバーの声を聞きながら整備をする地域の優先順位を設定することが望ましい。
- 計画通りに進まなくてもいい。進捗に応じて計画を見直す。
- 森の成長記録ガイドブックを参考に記録をとることで、メンバーのモチベーション低下を防ぐことができると考えており、活用してほしい。
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講習の様子 |
4:講習B 「交流の森」(予定地)の見学
講習会の限られた時間の中で見学と計画提案に十分な時間を確保するため、タクシーで交流の森へ移動して現地を見学しました。
5:講習C 「交流の森」をケーススタディとした計画提案
会場に戻り、2班に分かれて意見交換を行い、班ごとに代表者が意見を発表しました。
(主な内容)
20日A班
- 森の現状は薄暗いという意見と、街から来た人にとってはこのくらいが気持ちいいのではないかという異なる意見があった。
- 下草のシダ類は鬱陶しいというよりはきれいに感じた。
- ササ類が多い訳でもないし、ツル植物が少ないと感じた。
- 道の両脇にカエデ類や植えられたと思われるサクラ等が多かった。奥に入った所には常緑樹・落葉樹の大木(クスノキ、ナナミノキ、カシ類、コナラ等)が多くて立派であるので、この森は植樹をするのではなく今あるものを大事に育てていく森にした方がいいのではないか。植樹ではなく育林。
- ただし、道の周りはいいのだが道から離れた場所になると細い木が多かったりして入って行く気になれない。ネズミモチ等の細い木は切った方がいいのではないか。
- 今の大木がある状況をうまく利用して、防災に強い森、子供やお年寄りが入ってこれる憩いの森を目標にして整備していければいいのではないか。
- 大木はそのまま残すとしても、サクラ等に対して光が足りないようであれば、枝落としも必要になってくる。
- 付近の住民が道沿いに花壇のように植物を植えている。森としてふさわしくない植栽もあるので、地域の方に配慮しつつ、場合によっては森づくり活動に入って頂くような事も考える。
20日B班
- 林内は比較的明るいという意見と、暗いという意見と両方あった。
- 奥の方に行くとシダ類が多くて草が少なく暗かった。
- サクラやモミジがあったがモミジは少なかった。サクラは昭和50 年代に植えていたものか。
- 地形は尾根の方は急斜面で水の流れがあった。
- 管理道は比較的よく手入れされているという印象があった。
- 切った木を水みちに積んで土砂の流出を防いだらどうか。
- コナラ、カエデ等を増やしていってはどうか。
- 伐採の時にいい木を残すためにマーキングする。
- 大きな常緑樹については土地に光を当てるために一部切る必要がある。枝を落とす方法もあるが背が高くて難しい。
- まとめとしては見通しを良くするために小さな木を切って、更に太い木の間伐、枝切りも必要。
21日A班
- 今回の活動地が北斜面であるのが特徴で、基本的に常緑樹がほとんどであった。
- 林内はちょっと暗いという意見と、そのままでいいのではないかという意見があった。
- 伐採して植樹する場所ではないと思う。道路脇のイロハモミジ等を残しながら整備していくのがいいだろう。
- 水みちが出来ていたところもあり、それを何か活用できないかという意見があった。今後調査が必要。
- 利用者の多い六甲縦走路が通っているので、そこをきちんと整備していかなくてはならない。登山道も荒れているので土砂崩れ等がないように整備する。
- 南東に向いている斜面もあるので、ちょっと整備すればいい森になるのではないか。
21日B班
- 林内は暗いという印象。明るくしていけばいいという意見が多いが、ハイカーには今のままがいいのではないかという意見もあった。
- 林床はシダが生えていたが少なく、一部陽が当たっている部分は次の世代になると思われる木が生えていた。明るくすればもっと良い植生になるのではないか。
- 常緑樹は間伐して減らすが、落葉樹の高木等については残す。カエデのような紅葉がきれいな木を多くする事でハイカーから見て非常にいい森になるのではないか。
- 伐採した木を水みちに置いて土砂の流出を防ぐものに再利用する。また交流の森という名前が付いているのだから、ハイカーの方にも交流して頂けるように伐採した木をベンチにする等の利用法があるのではないか。
- 植生は出来るだけ六甲山に自生する木を中心に入れていく。外来種等は入れないようにする。
- どういう森でどういう目的で作られているのか、どういう人たちが整備しているのかを示した看板が必要(参加している全団体の名前が入った看板)。
6:講習D 森の世話人による発表
環境教育の場としての森づくり活動をテーマに発表して頂きました。
(7月20日は発表者欠席のため中止)
7月21日 環境学園専門学校 土井氏
(主な内容)
- 環境学園専門学校は尼崎市が公害問題を良くしたいという事で誘致された学校
- 苦楽園にある活動地で、下刈りや除伐を行っている。植樹も行ったが時期が遅かったため半分以上が枯れてしまった。
- (土井先生が受け持っている授業の中で)一番人気のある授業が、森づくり授業。下刈りや除伐を実際に行う事で達成感を感じるためと思われる。
- 活動地を利用して、卒業研究(ヒサカキの根の土壌固定効果(杭効果と緊縛効果)の有無)を行ったことがある。主根及び細根を採取して長さを測定した結果、主根による杭効果は低いが細根による土壌の緊縛効果は期待できるとの結果が得られた。
7:報告・質疑応答
- 住吉川の上流で植樹しているがここ2、3年でコウモリガが目立つようになってきた。特にコナラで被害が多いが木の選好性はあるのかという質問があり、この虫は下層に植生がある所の細い木に入り、太い木には入らないために、六甲の活動地では植樹した苗木に入る条件が揃っている可能性がある。六甲砂防の植樹でもコナラ、アベマキの被害が多かったので好き嫌いはあるかもしれない、という回答が事務所よりあった。
- ニセアカシア対策について質問があり、資料8によりニセアカシアの萌芽対策として、伐採面に農薬を塗布することでニセアカシアの多くを枯らすことができる。という説明があった。
- ニセアカシアに塗布する薬剤について質問があり、薬剤は一般の農家が使用する類のものであるが、原液を使用する必要があるため、森の世話人ではなく、事務所で実施するので、その都度調整してすすめていきたい、という回答が事務所よりあった。
8:連絡事項
六甲山大学関係者より大学についてのPRがありました。
- 六甲山上の民間団体と神戸新聞社が中心となって六甲山上の様々な活動の情報発信をしていくプロジェクトを立ち上げた。
- 具体的にはHPを立ち上げて一般公開していくので、参加者の募集等に利用してもらえばよい。
以上
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