第5回六甲山系グリーンベルト 森づくり講習会 要旨
参加団体
【森の世話人】 計20団体42名
(市民団体)
NPO法人 黄河の森緑化ネットワーク、兵庫県勤労者山岳連盟、とびまつ森関係団体、六甲ジョウビタキの会、日本ボーイスカウト兵庫連盟阪神さくら地区、夙川ボーイスカウト育成会、金鳥山自然環境保護・育山協議会、シニア自然大学研究部
環境科、パナソニック電工阪神地区松寿会・フォレスター松寿、ほくらぐるーぷ(山林ボランティア)、ブナを植える会、兵庫県山岳連盟
(企業)
住友ゴム工業 株式会社、株式会社 ノエビア、清水建設 株式会社、ネスレ日本 株式会社、株式会社 新井組、コベルコシステム 株式会社、トヨタ部品兵庫共販 株式会社、東京海上日動火災保険 株式会社
要旨
【プレ講習】
1:司会挨拶
事務局より諸注意や出席団体の紹介がありました。
2:六甲山系GB整備事業の概要について
日本の国土の特徴や六甲山の成り立ち、阪神淡路大震災で発生した斜面崩壊や、その対策として始まった六甲山系グリーンベルト整備事業等について六甲砂防事務所より説明がありました。
(主な内容)
- 六甲山は元々はなだらかな丘であったが、東西からの圧力により花崗岩の層が盛り上がってきた。それにより断層ができた。
- 六甲山は標高931mで海岸線までの距離が約7km。そのため六甲山を流れる川は県内の他の川に比べて非常に急である。
- 人口の増加に伴い山で開発が進み、危険箇所が増えてきた。
- 明治中期、六甲山は一面はげ山だった。雨が降ればすぐに出水し、川がしばしば氾濫した。
- 1902年(明治35年)に植林を開始した。
- 植林されたのは生育が早いニセカシアやマツであった。寿命が短かいため、森が荒れてしまった。ネザサが増え多様性に乏しい林になってしまう。それをバランスのいい樹林にする必要がある。
- 阪神・淡路大震災によって山全体が緩んでいる。震災後に災害に強い山づくり、自然豊かな森づくりをしていこうと六甲山系GB整備事業が始まった。
- 事業の目標は、土砂災害の防止、良好な風致景観や生物多様性の保全・育成、レクリエーションの場の提供、都市のスプロール化防止。
- 整備しても放っておくと元に戻ってしまうので、良好な維持管理を続けていく事が重要。
- 苗木は5年で成長し、その後は生存率も横這い。3年後の生存率は約60%。
- 苗木が活着しない原因はネザサ等の下草を刈る時に誤って一緒に刈る誤伐、ノウサギによる食害、植える時にしっかり植えられなかった、イノシシによる掘り起こし等がある。(六甲砂防事務所の管理している苗のデータ)
- 木を切って植樹をしたら終わりではなく、そこからが本当の活動である。息の長い継続した活動をお願いしたい。また、活動の中で楽しみを見つけて頂きたい。
- 森づくり団体は現在45団体。それぞれの団体間の連携を図っていきたい。
- 樹林整備によって生物の多様性がどのように変化したかの調査を行っている。
- ナラ枯れ対策としてキクイムシの駆除、拡散防止に努めている。トラップを設置しており、2週間前には20匹程、先日は200匹程かかっていた。
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講習の様子 |
【本講習】
3:開会の挨拶
2日は六甲砂防事務所岡本所長、6日は岩井副所長より挨拶がありました。
- 六甲山の面積は約130平方kmで、市街地に面したGBの地区は約1200〜1300ha。
六甲山の約1割がGBの事業区域となる。
- 神戸市の公園砂防部と連携しながら事業を進めている。神戸市は今年、100年を見据えた六甲山森林整備戦略を作ろうとしている。
- 11月下旬に神戸市と一緒に森づくりフォーラムの開催を考えている。
4:講習@ リーダーとしての役割
リーダーの役割と心構えについて事務局より説明がありました。
(主な内容)
- 林業従事者の死亡者は59人(平成22年)。一般的な業種に比べて死傷者も多い職種である。森づくりはけがをしやすいという事を念頭に活動して頂きたい。
- 森づくりハンドブックを活用して頂きたい。リーダーが知っていれば十分ではなく、参加者全員が知っておくべき内容が掲載されている。
- 参加者の情報(持病の有無、当日の体調等)を事前に確認することが大事。体調が良くない参加者は森づくりに参加させないこともリーダーの役割。
- 活動前にはKY(危険予知)を行う。準備が大事である。
- 参加者の個人差を考慮して、活動場所・内容をわけて活動している団体がある。
その際、一方的に活動内容を決めると不満が出る。参加者の意志確認は重要。
- 森づくり活動は刃物を使用するほか、伐倒等の危険な作業を伴うので、必ず声を掛けあう。
- 遠くまで聞こえやすい言葉は「ほ」。
- 特に登山道沿いで刈り払い機を使用する場合は、2人一組で活動し、一人は笛を持つなどして、登山者の接近に気を付ける。
- 怪我は休憩時にも起きやすい。道具を不用意に触る怪我も少なくなく、休憩時には道具を必要以上に触らない、触らせないように目を配る。
- 活動時は早めの休憩を心がける。
活動報告として提出された写真を教材にKYを行いました。
- 頭上作業の場合はヘルメットを必ず着用する。
- 対象物(切り落とす木等)の真下での作業は厳禁。
- カメラ等の貴重品を身につけたまま作業しない。衣服も汚れ等を気にしなくてよいものがよい。
- 作業に関係ない道具(特に刃物)を持ったまま作業しない。
- 伐採等の危険作業をしている近くで他の作業をさせない。
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講習の様子 |
5:講習A 市民救命士講習
灘消防団の救急インストラクターを招き、三角巾を使った怪我の応急手当の仕方を学びました。
(主な内容)
- 三角巾の畳み方
- 本結びの方法、解き方
- 三角巾を包帯として使う方法(頭、腕、胸、足等)
- 捻挫箇所の固定に使う方法
応急手当のこつ
- 傷の上では結び目を作らない。
- 体の外側に結び目を作る。
- 切れ端を直接肌につけないようにする。
- 傷ついた目を動かさないようにするため、怪我をしていない目を隠す。
- 腕を固定する場合、指先が見えるようにして、血流を確認する。
- 腕や足に巻く場合、細い方から太い方に向けて巻き上げると外れにくい。
- 他人の血液に直接触れないようにする。ビニール手袋や、買い物袋等を使う。
- 三角巾は畳み三角巾の状態で丸めるなどしてビニール袋等に入れて保管する。
事務局よりリュックを使用した怪我人の運搬方法についての補足説明がありました。
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救命士講習の様子 |
6:講習B 伐採木を活用した工作
NPO法人 森林ボランティア協会の山本さんによる講習がありました。
(主な内容)
- ベンチ等は一般の登山客等が利用する事が考えられ、それで怪我をする可能性もある。目立たないようにした方がいい。
- 道や階段をつくるのは活動地内の安全を確保するためであり、登山道を整備するわけではない。
- 設置する場合には杭がしっかり横木を固定していることを確認する。浮いている事が多い。また、雨水の通り道とならないようにする。尾根筋に設置することが望ましい。土壌浸食の恐れがあるので設置は必要最小限にする。
- 年数が経てば痛むので、不具合箇所の早期発見、撤去が必要。そのためには、定期的に確認する。
- 活動地によって違うが、森の産物は色々あるので工夫して楽しい活動を。
- サクラ等の小枝を利用してアクセサリー等の小物を作ることができる。ストラップ、キーホルダー等のパーツは手芸洋品店で入手出来る。
- リョウブの木は乾燥しても割れにくいのでコースターなどに加工するのに適している。
- どんぐり等は出来れば収穫後すぐに加工するのが良いが、保存する場合は洗って乾かしてから冷凍保存すると長持ちする。
- それぞれ加工するのに適した時期があるので、先を見越して材料集めをしておく。
- 伐採して切り開いた後には真っ先にトゲ植物が生えるので注意。
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講師の山本氏 |
7:連絡事項
生物の調査結果及び連絡事項の報告が事務局よりありました。
- 活動地での生物モニタリング調査の報告
森の世話人の活動地全体で6種類の哺乳類が確認された。出現頻度が高かったのはイノシシ。蝶類は森づくりの指標となる。多ければ環境が良くなっていると言え、最も多く確認された活動地では9種類の蝶が確認された。
- ハチトラップは女王蜂を捕獲して巣ができるのを防ぐ目的で設置する。六甲砂防事務所で生物調査を行っており、調査地点の近くにトラップを設置されるとデータがおかしくなる。設置の際は事前に事務局へ連絡をいれる。
- ベンチ等を設置する場合には事務局に申請が必要。
- 活動地に倉庫を設置したポスターが掲示されていたが、設置は許可しておらず、現在は倉庫を撤去してもらっている。
- 次回の講習会は秋を予定。現地で植物の見分け方講習を行う予定。
以上
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