大雨や地震などが引き金となって、山やがけがくずれたり、水とまじり合った土や石が川から流れ出たり、火山の噴火などによって、わたしたちにおそいかかってくるのが土砂災害です。
山の斜面や川底の石や土砂が、長雨や集中豪雨によって、一気に下流に流されるのが土石流。流れるスピードは時速20kmから40kmとたいへん速く、大きな岩がまじっていることもあります。
土石流による災害は、急な谷川があるところや、谷の出口の扇状地でよくおこり、そのスピードが速いために、人命にかかわる大きな災害になることが多いのです。
山全体がうなるような音(山鳴り)がする。川の流れが急ににごったり、流木がまじりはじめる。雨が降りつづいているのに、川の水かさがへりはじめる。といった場合には、土石流に対する注意が必要です。
土石流を防ぐには、山地からくずれ出す土砂の量を少なくするため木を植えたり、谷川を流れ下る土砂をせき止める砂防えん堤をつくったりします。
そのほかにも、「遊砂地」という砂をためる施設や、危険な川を安全にする護岸などをつくります。
■遊砂地
氾濫した土砂をためて、下流に流さないようにします。
■護岸工
川の流れをなおし、川がけずられ土砂が増えるのをおさえるとともに、洪水を防ぎます。
■山腹工
山の斜面が崩れた所や緑が失われた荒れた所で法枠などの土木構造物を作ったり、木を植えたりすることによって土砂が流れ出すのを防ぎます。
■砂防えん堤工
土石流を直接受け止め、ここで一時的に土砂をため、少しずつ安全に下流に流していく働きをします。
■ようへき工
コンクリートなどで壁をつくって斜面をおさえたり、くずれてきた土砂を受け止めます。
■のりわく工
コンクリートのわくで斜面を覆って、斜面がくずれないようにします。
斜面が突然くずれ落ちる現象。大雨や長雨で地面に水がしみこんでおこりますが、地震によるがけくずれもあります。地すべりとのちがいは、前ぶれがあまりなく、突然おこり、くずれるスピードが速いことなどです。
がけから小石がパラパラ落ちてくる。がけに割れ目ができた。がけからの湧き水がにごってきた。という場合には、がけくずれの危険があります。
がけくずれを防ぐために、くずれやすいがけの上の土を取りのぞいたり、がけの表面をコンクリートや芝などでおおって、水がしみこまないようにする工事をします。
また、がけの下に壁をつくり、土砂がくずれ落ちるのを防いだり、落ちてきた土砂を受け止めたりします。
■水路工
水路によって、地すべり地域内の雨水を集め、その外にいち早く流します。
■排水工
井戸やトンネルをほって、地面の中にしみこんだ水を取りのぞきます。
■くい打ち工
くいをすべる面より下の動かない層にまでとどくように打ちこんで、地面がすべらないようにします。
地面は、固さや性質のちがういくつもの層がつみ重なってできています。地下水がねん土のようなすべりやすい層にしみこみ、その層から上の地面がそっくりすべり出すのが地すべり。
その動きは、ふだんは1日に数ミリメートルとゆっくりですが、突然スピードを増すことがあり、広い範囲で地面がすべると、おし出された土砂や地面の移動によって、家や田畑がこわされます。
地面にひび割れができた。地面の一部が落ちこんだり、もり上がった。池や沼の水かさが急に変わった。井戸の水がにごった。という場合には、地すべりに対する注意が必要です。
地すべりは、地面の中に雨水がしみこんでおこるため、地すべりを防ぐには、雨がしみこまないうちに集めて流す水路をつくったり、しみこんだ地下水を取りのぞく井戸やトンネルを掘る工事をします。
このほか、くいを地中深く打ちこんで地面がすべらないようにする「くい打ち工」などがあり、これらを組み合わせて工事をします。
地すべりが起こると、家や田畑だけでなく、鉄道や道路などの交通路もこわしてしまいます。また、川に土砂が入った場合は、川をせきとめる天然のダムができるので、川の水があふれて上流側の家々が浸水ひ害をうけます。さらに、このダムがこわれると、たまっていた水がものすごいいきおいで下流側にはんらんし、こんどは下流側に水害を起こします。
地すべりの影響はこのように広い範囲におよぶので、それに合わせた対策が必要なのです。