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発展を続ける日本の砂防

略年表

年代
記事
寛永6年
(1666)
諸国山川掟の令
「国を治めるには水を治めよ、水を治めるにはまず山を治めよ」
諸国山川掟の令
江戸時代
土砂留奉行が土砂災害の防止にあたった。
(1755?56)
木曽・長良・揖斐三川合流工事(島津藩)においても上流部で砂防工事を行った。
明治6年
(1873)
オランダの治水技術者デ・レーケなどが来日。種々の砂防工法を指導する。
ヨハネス・デ・レーケ
明治10年頃
国が直接砂防工事をはじめる。(砂防百年の起源)
明治30年
(1897)
現在の砂防法が成立
明治後期
オーストリアの砂防工事技術を導入する。
大正末期
昭和初期
コンクリート砂防えん堤がつくられる。
昭和時代
昭和33年
「地すべり等防止法」の制定。
昭和44年
「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」制定。
砂防を環境対策の一つとしてとらえ、新たに地すべりやがけくずれなどによる災害を防止するための工事を行い、災害のない明るい国土づくりをすすめている。

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砂防のはじまり

砂防のはじまりは天武天皇の勅令?

山が人の手によって荒れはじめたのは古代のころから。都のまわりの山々では、まきや炭、建築の材料、大仏や焼き物をつくるための燃料に利用するためにむやみに木が切り倒され、また戦火による山火事が何度もおこったりして、とてもひどい状況にありました。

木を切り倒すことを禁止する取りしまりや、草木のない山に草や木を植えることを「砂防」とするなら、そのはじまりは西暦677年の天武天皇の勅令や、806年の山城国大井山(現在の嵐山付近)の禁伐にまでさかのぼることができます。

天武天皇の勅令では、明日香村の南渊山と細川山で草木を切ることを禁止。山城国大井山(現在の嵐山付近)では、葛野川(現在の桂川)に土砂が流れ出して洪水が何度もおこったため、河岸の木を切ることを禁止しました。

江戸時代の「諸国山川の掟」

行政として砂防の全国的な取り組みがはじまったのは江戸時代になってからのこと。1666年と1668年には「諸国山川の掟」が出され、山林をむやみに切り倒すことや河川ぞいの開墾を禁じ、荒れた山に木を植える工事を行うことが命じられました。

河村瑞賢の「治水は治山にあり」

淀川水系の治水工事に力をつくした河村瑞賢は、1683年に淀川流域を調査するうちに、その水源となる山地がたいへん荒れていることに驚き、「治水は治山にあり」(水を治めることは、山を治めることである)と、山林の保護につとめました。

土砂留奉行の制度

計画的な砂防工事がはじまったのは、1684年に土砂留奉行の制度ができてから。藩が主体となって各地で山の斜面に草木を植えたり、現在の渓流工事の原型となるような砂留、石垣留などがつくられ、その中には福山藩の砂留のように現在もなお残っているものがあります。  福山藩の砂留は、高さ10m以上まで石をつんでつくった砂防えん堤。150年以上たった今でも、完全な形で土砂をくい止める働きをします。


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近代砂防の一世紀

ヨーロッパ技術の導入

明治時代はじめ、政府はオランダから技術者を招き、治山治水の河川技術をはじめて外国から導入しました。来日から約30年間、全国で指導にあたったヨハネス・デ・レーケは、河川の工事をする前に、山林を保護し荒れた山に木を植える砂防事業をする必要があると政府に意見を出し、それを受けて、重要な河川の河川改修の一つとして砂防事業がはじめられることになりました。

当時のオランダの土木技術を導入した河川工事は、舟運の水路として利用される川の低水護岸をつくるための低水工事で、洪水を防ぐことを目的としていませんでした。そのため、切り立った地形や洪水がたくさんおこる日本の実情にはあまり適さず、また交通の手段が舟運から鉄道中心へと変化したこともあって、明治30年代からは、洪水を防ぐことが中心のオーストリアの砂防技術が導入されるようになりました。そして、砂防工事はそれまでの山林の保護や荒れた山の斜面に木を植える工事から、砂防えん堤を中心とする渓流工事へと移っていきました。

芦安砂防えん堤と水通し立上り部の築石の状況写真

大正時代に入ると、富士川の芦安ダムではじめて砂防工事にコンクリートが使われ、その後、材料の進歩、機械の発達とともに、砂防工事は大型の砂防えん堤を中心とした渓流工事に変わっていきました。


砂防法の制定

治水工事が全国で行われるようになり、明治30年(1897)に「砂防法」という法律がつくられました。砂防法は、現在までほぼ制定当時のかたちをとどめているもっとも古い法律の一つで、河川法、森林法とともに「治水三法」と呼ばれています。

砂防法には、砂防行政の目的を、「土砂の生産を抑制し、流送土砂を扞止(かんし)・調節することによって、下流河川における災害を防止する」と定義されています。

砂防の今日

社会や自然環境のうつりかわりとともに、砂防の仕事も少しずつ変化してきました。現在の砂防では、砂防えん堤や荒れた山に木を植えたりする工事だけにとどまらず、住民に土砂災害の危険がある場所を公表したり、警戒避難体制を整備して、総合的な土砂災害対策に取り組んでいます。

また、自然環境をこわさないよう、砂防施設のまわりに木を植えたり、自然の生きもののことを考えて、自然と一体となった砂防事業を行っています。六甲山地で行われている「六甲山系グリーンベルト整備事業」も、こうした仕事の一つ。安全で緑豊かな都市環境と景観をつくり出そうというもので、地域の人々の声を十分反映しながら、事業がすすめられています。


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