3.自治体支援

地方公共団体が抱える課題に対しては、個々の団体の努力のみで解消できるものではありません。
今後本格化するメンテナンス時代に向けて、国土交通省が地方公共団体に対し様々な支援を行っていくことが大切です。

自治体の橋梁にて直轄診断を実施

奈良県十津川村の猿飼橋にて、自治体支援の一環として猿飼橋の直轄診断を行いました。

地方公共団体が抱える課題

地方公共団体も老朽化対策に取組んでいますが、管理する道路施設が多い割に土木技術者が不足しているなど抱えている課題も多く存在します。
特に規模が小さい町村ではその傾向が強く、「財政力不足」、「職員不足」、「技術力不足」等が課題となっています。
【※直轄診断とは】
「橋梁、トンネル等の道路施設については、各道路管理者が責任を持って管理する」という原則の下、それでもなお、地方公共団体の技術力等に鑑みて支援が必要なもの(複雑な構造を有するもの、損傷の度合いが著しいもの、社会的に重要なもの、等)に限り、国が地方整備局、国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人土木研究所の職員で構成する「道路メンテナンス技術集団」を派遣し、技術的な助言を行うもの。

猿飼橋の概要

【正面】
猿飼橋正面
【側面】
猿飼橋側面
猿飼橋 諸元(昭和49年3月完成) 橋齢41歳
鋼ランガー桁橋 橋長138m 幅員4.0m

村道平谷竹筒線(猿飼橋)路線の位置づけ

地域の生活道路として重要な役割 特別養護老人ホーム「高森の郷」
村営住宅「高森団地」
地域の生活道路として重要な役割
写真:十津川村提供
特別養護老人ホーム「高森の郷」 村営住宅「高森団地」
写真:十津川村提供
猿飼橋は、猿飼地区、山手谷地区、玉置川地区の住民が日々利用しており、世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道「大峯奥駆道」の霊峰玉置山に通じることから多くの観光客が通行しています。

また、猿飼地区には特別養護老人ホーム「高森の郷」とともに、平成23年紀伊半島大水害からの復興のため「高森団地」へ村営住宅が建設されています。「高森団地」には、高齢者向け住宅の建設が進められており、猿飼橋は地域の生活道路として重要な役割を担っています。

平成27年7月の台風11号で発生した国道168号(桑畑地内)落石による通行止めでは、和歌山方面への迂回路として猿飼橋が利用されました。

直轄診断現地調査について

日時: 平成27年11月6日(金)10:00~14:30
場所: 奈良県吉野郡十津川村大字平谷(猿飼橋)
参加者: 道路メンテナンス技術集団18名(近畿地整、国総研、土研)、十津川村職員


<猿飼橋で発見された主な損傷>

損傷箇所
損傷 損傷
①②アーチ基部では、一部で著しい断面減少が確認され、支承との取り付けボルトにナットの欠け(または減肉)がみられた。
損傷 ③全体において劣化が進行しつつあり、すでに発錆に至っている箇所も散見。

直轄診断による技術的助言

  • 塗装の劣化は橋全体で進行しているが、鋼材の腐食は一部に限定
  • 疲労耐久性に注意が必要な構造形式であり、橋の中央部など重要度の高い鋼材の溶接部は優先的に亀裂調査が必要
  • 現場環境と腐食状況を考慮して塗装の塗替仕様を検討し、防食(塗装)計画を見直す必要がある
  • 一部の接合部に遅れ破壊が懸念される高力ボルト(F11T)が使用されているため、定期点検時等の適切な時期に確認が必要
  • 橋の下部などで、過去の水害を受けている形跡がみられるため、洪水対策の検討が望ましい

道路緊急ダイヤル(#9910)

★道路利用者が幹線道路の異状等を発見した場合に、直接道路管理者に緊急通報できるようにするとともに、それを受けた道路管理者は迅速に道路の異状への対応を図ることによって、安全を確保します。
★緊急通報は、道路の穴ぼこ、路肩の崩壊などの道路損傷、落下物や路面の汚れなど道路の異状を対象とします。