瀬田川南郷洗堰100周年記念事業
旧瀬田川南郷洗堰保存検討第2回ワークショップ開催報告

 
   平成18年2月5日(日)に「旧瀬田川南郷洗堰保存検討第2回ワークショップ」が開催されました。歴史的・文化的価値を有する旧瀬田川南郷洗堰の価値を認識し、後世に受け継ぐための保存方法や今後の利活用の方法について、住民のみなさんとともに考えていこうとする取り組みの第2回目です。
  第2回目のワークショップでは、第1回目のワークショップや各種アンケート・ヒアリングを通していただいたご意見をもとに、旧洗堰の活用に向けた視点を設定し、その視点に沿った具体的取り組み・整備アイデアをいただきました。
 参加者の皆様よりいただきました様々なご意見を、当日のワークショップの様子とともにご報告させていただきます。
 

☆第二回ワークショップの概要
○日時 平成18年2月5日(日)
  ○会場 南郷市民センター3階会議室
  ○一般参加者 16名
  ○アドバイザー 岡田 昌彰(近畿大学理工学部 講師)
田中 尚人(岐阜大学工学部 講師)
お寄せいただいた質問・疑問について
第1回ワークショップやその後に収集したご質問、疑問について回答させていただきました。 洗堰の説明を聞き入る参加者のみなさん
■ グループ討議
 これまでいただいたアンケートや団体ヒアリングの結果及び第1回ワークショップでのアイデア等を整理し、保存・活用に向けた6つの視点を設定し、視点ごとに具体的なアイデアについて議論を行いました。
設定した視点
旧洗堰の歴史を後世に伝えたい
1.残す(旧洗堰自体やその歴史などを“残していく”) グループ討議の様子
2.学ぶ・知る(旧洗堰の価値や歴史を、様々な人が“学び・知る)
3.語り継ぐ・広める(旧洗堰の価値や歴史を、次世代へ“語り継ぎ”、様々な人へ“広め・周知する”)
魅力ある場所にしていきたい
4.憩う(“憩い”の空間としての魅力を高める)
5.集う(“集い”の空間としての魅力を高める)
6.活かす(観光など、様々に“活用する”空間とする)
1.残す
何故残すのか?
・ 旧洗堰自体、逸話や資料など、残っているうちに残さないといけない(無くなってからでは、取り返しが付かない)。
・ 何故残すのか?何のために残すのか?といったことは、しっかりと議論しないといけない重要な視点。どのように残すのかが決まってからも、このような視点でフィードバックしないといけない。
資料を残す
  ・資料を残すための編集組織を立ち上げるとよいのではないか。地元の人が入るとともに、学識経験者など、指導する人にも入ってもらうべき。
旧洗堰そのものを残す
  ・ 古いままのイメージを残すことは大切だが、何もしないままではさびしい。何らかの仕掛けは必要。
2.学ぶ・知る 4.憩う(あわせて議論)
憩いの空間とは?〜憩いの空間づくりのコンセプト〜
・ 旧洗堰の周辺空間が憩いの空間として親しまれ続けるためには、地域住民や来訪者に日常的に使いこなされていることが大切である。 意見をイラスト入りでまとめました
・ そのためには、まず、自分たち(ワークショップメンバー)が楽しめる空間であることが大切である。
  ・ その楽しさを周囲の人々や来訪者と共有したいという思いが、洗堰とその周辺の歴史を学び、知る、そして伝える動機となる。
憩いの空間づくりの方向性〜歩いて憩う、留まって憩う〜
<歩いて憩う>
  ・ 歩いて憩うことを楽しむことが大切である。
  ・ 歩いて憩いながら、旧洗堰の歴史や役割を学ぶ工夫をちりばめることで、学びの空間としても親しまれると考えられる。
<留まって憩う>
  ・ ゆったりとコーヒーを飲みながらくつろいだり、景観を楽しみながら物思いにふけったり、留まって憩うことのできる空間づくりが大切である。
  ・ 水面からの旧洗堰の眺め、大日山からの眺望など、新たな視点場の発掘が旧洗堰周辺の魅力をさらに高めると考えられる。
「ぶらぶらしよか?」憩いの空間づくりの取り組み  〜ハード、ソフト、ハート〜
<ハード>
  ・ 上流側・下流側」を繋ぐ遊歩道を整える。各視点場近傍を使いやすい場として整える。
  ・ 左岸側の旧洗堰の堰上を開放して、旧洗堰に直に触れられるようにする  
  ・ 角落しの角材を復元して実際に触れられるようにしたり、旧洗堰のそばに説明コーナー/説明サインを設けたりするなど、学びの工夫をちりばめる  など  
<ソフト>
  ・ 周辺の遊歩道や使える空間(視点場、溜まり場)の情報を広く発信し、多くの人に使ってもらえるように工夫する  
  ・ 空間の使い方(楽しみ方)を公募する(視点場近傍のオープンカフェや台船を使ったイベントなど)  
  ・ アクア琵琶の展示と説明コーナー/説明サイン、休憩所の展示との連携を図る  など  
<ハート> (プロジェクトを動かす、第一歩を踏み出す人づくり)
  ・ ワークショップメンバーが旧洗堰周辺で憩い、楽しむことを目的として、旧洗堰周辺の良さを知り、その良さを周囲の人々や来訪者に伝える企画を実施する(ウォークラリーのワークショップメンバー版)  
■ 討議結果の発表
3.語り継ぐ・広める
語り部プロジェクト
<目的・ねらい> ・住民ができることと行政ができることの棲み分け(役割分担)をはっきりさせる。
<誰が> ・【ワークショップ参加者+住民の有志】(プロジェクトメンバー)
  <どうする> ・実体験者(語り部)を集める。/語り部を派遣する。
  <実現のために必要なこと> ・語り部にプロジェクトの主旨を理解してもらうため、我々(プロジェクトメンバー)が旧洗堰について(旧洗堰の重要性、保存の必要性)もっと学ぶ。
    ・語り部にお願いしに行く側(プロジェクトメンバー)の立場をはっきりさせるため、旧洗堰の保存・活用をすすめるコア団体としての社会的地位(肩書き)を行政側に公認してもらう等の公的な支援が必要。
関心を持たせるプロジェクト
  <目的・ねらい> ・「語り部プロジェクト」等を実現するためには、まず我々(語り部プロジェクトメンバー)の旧洗堰を保存したいという想いや活動を広く伝えることが必要。
  <どうする> ・ワークショップの活動内容を広く公表する。
    ・旧洗堰の重要性、歴史等を知ってもらうことができる資料等をアクア琵琶等に準備し、旧洗堰、アクア琵琶にもっと多くの人が来てもらうように呼びかけたり、マスコミ等も活用しながら、旧洗堰をPRする。
  <実現のために必要なこと> ・呼びかけの主体となるコア団体の社会的地位の確立。
5.集う
色々な場所から旧洗堰を見ようプロジェクト
<目的・ねらい> ・ウォーターステーション屋上や船上など様々な視点から旧洗堰を見て、新たな発見・感動を探してみる。
<誰が> ・【ワークショップ参加者+住民の有志】(プロジェクトメンバー)
  <どうする> ・ウォーターステーションの屋上を開放したり、船を運航し、地域の人々や観光客に色々な角度から旧洗堰を見てもらう。
  <実現のために必要なこと> ・施設管理者や交通事業者等の協力が必要。
水の駅プロジェクト
  <目的・ねらい> ・バス・タクシー等の陸上交通と観光船などの水上交通を乗り継ぎする「水の駅」を整備し、人が集まる空間をつくる。
  <どうする> ・南郷バス停付近に船の乗場を設置し、バスと船の乗継ぎもできる「水の駅」を整備する。
  <実現のために必要なこと> ・【ワークショップ参加者+住民の有志】(プロジェクトメンバー)といったコア団体の設立により、長期的にでも実現に向けて働きかけることが必要。
6.活かす
ライトアップする
・一人○○円で、ライトアップのボタンを押せるような取り組みをしてはどうか。
舞台としての整備
  ・(左岸側)旧洗堰を舞台として、そのまわり(護岸)部分を観客席のように整備して、能舞台など様々なイベントを開けるようにしてみてはどうか。
直接見られる
  ・左岸側の旧洗堰周辺に、矢板を作って、旧洗堰全体を見られるようにできないか。直接その大きさを実感できるので、インパクトがあるし、理解も進む。
後背地の整備
  ・アクア琵琶、水産センター、駐車場等を含めて、周辺の利用のしやすさを見直すべき。
アドバイザーからのコメント
 アドバイザーの先生方から、旧洗堰や今回のワークショップについてコメントをいただきました。
・人々の「心に残る」ような取り組みが重要であり、旧洗堰に対するパブリックアウェアネス(公的関心)を高めることが大事。一過的でも印象的なイベントは、人々の記憶に残りやすい。
・「新しい見方」を提供することにより、見慣れたものを見直すこと(異化)が重要。高いところや、船の上など、これまでと違った新鮮な視点、視座から見ることで、見慣れたものが、引き立ち、違った魅力が見えてくる。
・このような取り組みは、3回のワークショップに留まらず、継続的に続けていくことが重要。次世代につなげていくためにも重要なことである。
岡田昌彰先生 田中尚人先生
岡田昌彰先生 田中尚人先生
■ふりかえりシートのご意見

 参加者に今回のワークショップの感想などいただきました。主な意見を紹介します。

・旧洗堰周辺を憩いの場所にして、歴史を語る場所として、広く長く人々に愛される場所として、このワークショップをきっかけに後世に残っていけば素晴らしいと思った。
・いかなる具体的な活動方針もその起動エネルギーはワークショップが担うことが大切である。
・旧洗堰の存続、整備を周辺住民の意見により進めるということが必要であると感じた。
・行政へ求める事(ハード面など)と自分ができる事を分けて考えてみたい。
・他の土木遺産活用の事例をいろいろ紹介してもらったことがよかった。(知りたいと思っていたことの一つ)
・次回はもう少し保存、利活用の具体的な提案をしたい。保存、利活用がどのような方向付けされるか判らないが、私としては今後なんらかのお手伝い(ご協力)が出来ればと思っている。例えば、「冊子編集のメンバーに参加」とか「洗堰紹介の語り部への協力」など。

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