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2003年2月発行

紀の川流域委員会ニュース No.13



● 第13回紀の川流域委員会 議事骨子
第13回紀の川流域委員会の議事骨子については次のとおりです。

平成15年1月20日

第13回紀の川流域委員会 議事骨子

委員長 中川博次

 第13回紀の川流域委員会は1月20日(月)JA和歌山において全委員23名中20名の出席のもと実施された。
 

1.紀の川河川整備計画について(委員から出された意見等について)

 河川管理者から紀の川河川整備計画の目標流量について説明があった。説明の内容は以下のとおり。
  • 他の河川の目標で戦後最大規模に決まった背景
  • 伊勢湾0.8〜1.1倍時の具体的メニュー
  • 上野公園完成後の浸水実績
  • 二見地区・野原地区の遊水地効果について
委員会の様子1

委員会の様子2 それらの説明に対する主な審議内容は次のとおり。
  • 整備事業がまだ行われていない場合で自然に氾濫するような箇所を将来像を見越して遊水地氾濫域に指定する場合、地権者の同意、協力、いろいろな手当などが必要なのか。
    →これが決まりというものはないが、計画として何もしないというのであれば少なくとも地元の合意は必要だと思う。
  • 九度山町の安田嶋に遊水地案が出ているが、遊水地を造るということはそこにダムを造るということと同じ事である。実際堤防が半分くらいできており残りは地域住民の土地の問題で止まっていると聞いた。地域住民をはじめ九度山町は堤防建設を望んでおり、地域住民の意見を聞かずに紀の川流域委員会が遊水地の指定をしたら大きな問題になるのではないか。
    →整備計画を作るにあたっては、必ず市町村長の意見、住民の方の意見を聞くということになっている。
    ⇒整備計画を作成するプロセスは各市町村の計画などを考慮に入れなければならない。そのため自治体あるいは地域の住民の方の意見を聞いた上で最終決定することになる。
     遊水地は代替案として位置付けるかどうかの可能性を議論したものであり、遊水地をつくると言う事ではない。いろいろな角度から議論したものであり、他に代替案があればそれと比較して対応していくものである。
  • 遊水地は費用対効果が低いのではないか。
    →当該地区について何もしないという施策は検討、審議がなされていないので検討はしていないが、計画的に遊水地を整備する場合は堰の改築より費用対効果は低くなる。
    ⇒今議論しているのは費用対効果ではない。整備計画を作る前に代替案なども含めた上でいろいろな案を比較検討し、整備計画案を提示していく。
  • 流域の大きさから考えて外水を貯める効果はないと思うが、堤防を整備した場合の内水対策における遊水地の効果についてどのように考えているのか。
    →総合治水対策における流出抑制や、貯留浸透は比較的都市河川、川の規模が小さいところで行われている。紀の川は大河川なのでどれだけ総合治水対策が機能するか調査したことはない。
    ⇒内水対策は大事だと思う。沿川の土地利用が変わってきており、土地利用の規制なども必要になってくる。内水をポンプ排水するなどは行われておらず、内水湛水などがおこってくると思う。
  • 委員会の様子3 遊水地は費用対効果の面からは不利かもしれないが、環境面からみれば水を貯めるということは必要である。その箇所が安田嶋であるというのは別の問題である。
  • 地形的に安田嶋は氾濫しやすい箇所である。
  • 遊水地に指定するという提案ではなく、自然の遊水地を提案している。二見地区について提案した遊水地は、衛生処理場を含んだ所から県立五條病院に至る所が私が提案した所である。流出低減効果が10m3/sどころではないはずである。
    →ご提示した場所は委員の提示場所と大差ないと思うが、照合を行い報告したい。

 

2.利水について

江種委員から「利水と水質」について、三野委員から「農業水利と流域環境管理」について説明があった。主な内容は次のとおり。
●「利水と水質」について
  • 気象変化(渇水・集中豪雨の頻発)
  • 健全な水・物質循環(維持流量の確保、汚濁負荷量の削減)
委員会の様子4

それらの説明に対する主な質疑内容は次のとおり。
  • これからダムによる水資源開発が減り、小雨傾向によって渇水が増え、地下水を過剰に汲み上げる事になり、ますます河川水も枯渇していくことが考えられる。地下水を河川水のかわりとして使うことに支障があると思うがどう考えるか。
    ⇒現在、地下水が把握できていないので利用するにあたっては量、質、場所の実態調査が必要である。
  • 岩出井堰と新六ヶ井堰の間について、例年、5月くらいから秋にかけて藻類が4倍くらい増えているという実態がある。紀の川大堰ができることによって、藻類がさらに増殖するのではないかという心配をしている。
    ⇒水が停滞するところでは藻類が発生することが一般的である。紀の川大堰ができることによってどうなるかははっきり分からないが、藻類の発生を防ぐ為には、流域における発生源を抑制しないと根本的解決にはならない。
●農業水利と流域環境管理について
  • 水利用と農業用水
  • 農業水利開発の歴史と河川
  • 伝統的治水技術と水田開発
  • 農業水利ストックと水田用水量
  • 流域環境管理と地域環境マネジメント
委員会の様子5

それらの説明に対する主な質疑内容は次のとおり。
  • 紀州流で築かれた土木水準は非常に高いと思っているが、土木工学的観点からみるとどのレベルか。
    ⇒紀州流が唯一土木を制したものではなく、古代の帰化人の大陸の技術を紀州で集大成されたものであり、この時代背景のなかで完成した流派であると考えられる。
  • 紀の川の流量が減る事によって水質が悪化するのか、還元水の影響で悪化するのか。
    ⇒しろかきの水を落とす事により濁り水が河川の水質を悪化させている。それをトラップするのに遊水地が重要な役割をしているが、紀の川では地形上トラップせずに出してしまうという特徴がある。そういうものを出さないようにする技術として無しろかき法などが琵琶湖で行われている。それは農家の負担がとても大きいものであり、農家が自発的ににごり水をださないようにするためのしくみを、下流の人々からの支援も含めて重要になる。また、濁り水を止めるという意味からは出口に遊水地を造るということも重要である。
  • 横浸透6割が還元水と見なしてよいのか。また、非常に水が不足しがちな地区をなくしながら取水量を減らすという農業用水の管理のしかたは農業工学の分野でされているのか。または、可能なのか。
    ⇒収支的にみて6割から7割が還元水である。反復量を増やして河川からの取水量を減らすためには、流域全体での管理が必要である。そのためには、地域の土地改良区に脱皮したときに機能が働くと考えている。
  • 地域用水とはなにか。
    ⇒地域用水は灌漑用水だけではなく、地域の生活用水など地域の雑用水的なものも含まれていた。
  • 堰と堰の間の河川水が減っている。そのため水質が悪くなり生態系に影響を及ぼしていると考えられる。河川の維持流量の確保の観点からよい方法はないのか。
    ⇒木目の細かい用水管理が必要である。それが可能なのは土地改良区であり、土地改良区の協力を得て河川管理と結びつけていく事が大切である。
委員会の様子6 委員会の様子7
 

3.第4回紀の川流域委員会勉強会の報告

 養父委員から第4回紀の川流域委員会勉強会について説明があった。
主な内容は次のとおり。

●前回勉強会での質問に対する回答
  • 飽和雨量について
  • 総合治水における取り組み(大和川)
●昭和34年9月型洪水における氾濫箇所の分析について
  • 要望書で提出しているグラフを使って次回の勉強会で説明をお願いしたい。
    ⇒次回勉強会で説明する。
委員会の様子9
 

4.次回の開催内容について

次回の開催内容は次のとおり
  • 河道掘削、築堤、遊水地、堰の改造、それらに対する問題点を広範囲の視点から議論して頂きたい。
  • 開催時期は3月前半とする。
  • 開催場所は和歌山市内とする。
 

5.一般傍聴者からの意見

  • 上田井地区は洪水時は家も水田も冠水する。堤防を建設中なので紀の川の氾濫は少なくなると思う。内水対策も万全にして頂いている。上田井以外にも同じような地区があると思うので、委員会で慎重な審議をお願いしたい。
  • 打田町から粉河町の紀の川右岸の未改修区域の約2kmの一日も早い改修をお願いしている。委員会の議論ではこの嶋地区は遊水地区だから遊水地にしたらどうかという意見がある。「地区の農家の人の話では、ここの地区はもともと遊水地区だったんだから冠水してもしかたないと地元の方が言っている」という表現があるが、地元の人は一切言っていないと怒って役場に来たということを伝えたい。「紀伊丹生川ダム計画の問題と紀の川治水対策」では将来遊水地として活用する可能性のある嶋地区などは早期に河川改修を進めず、時間をかけて検討する必要がある。という表現があるが、一年に5回も6回も台風がくるとか、大台ヶ原に大雨が降るということになれば、何十年来大変心配してきたことでありますので、これよりも整備が遅くなるということに対しては不本意である。私達サイドでは偏見であり、弱者切り捨て的な考え方であるとも言える。このような団体の意見を無視していただいて、地域の本当の声を聞いて頂き、委員会として一日も早く築堤する方針を立てて頂きたい。
  • 岩出井堰の魚道が機能していない。故意に魚道に水を流さない。魚道で稚魚を捕っている。こういう生態に反する事が行われている。現在行われている岩出井堰の工事の目的を知りたい。農林行政担当者の意見を聞きたい。小倉地区の地下水採水に関する詳細を知りたい。
  • 委員会の様子8堤防以外の対応策があるということで遊水地を提案してみた。遊水地案は実際ここで果樹園を営んでいる人を無視しているのではなく、損害賠償などを考えている。遊水地を提案した理由は堤防を作ることは費用多くかかるので、他に解決策があるのではないかと思ったからである。
  • 玉川漁協が財団法人日本釣振興会より「釣り人が選んだ天然アユがのぼる100名川」に選定されたという認定書を頂いた。紀の川は天然アユが上る全国有数の川であると思われる。紀の川大堰を始めとした堰の工事の問題もあると思うが、環境問題、水質問題を重点にやって頂きたい。
 

6.その他

「紀伊丹生川ダム計画の問題と紀の川治水対策」に対する委員長の見解
  • 個人的な考え方としては、上下流で治水安全度を変えるということは、川を通しての公平性に立脚すれば全然話にならない。河川を整備していくには非常に時間がかかる。従って流域全体、河道全体、河川全体、総合的効果があるのはどこから優先的に工事を進めるべきかを決めなければならないが、上流は氾濫して下流を守るという考え方では従来の重要度の評価の考え方と同じであり、弱者切り捨てに通じる。現在までの、流域の土地利用形態や変化などを充分考えた上で選定していく必要があると考える。例えば、重要地区はどのような基準で判定するのか。また、人口、資産、経済活動だけで評価していいのかなど、今後議論をしていきたい。
⇒:委員回答
→:河川管理者回答


この議事骨子は、委員会終了後に速やかに審議内容が公開できる様に取りまとめたものです。従って、今後議事の詳録を作成する上において、修正等が加わることがありますが、その際は、ホームページ上で修正箇所等を明らかにした上で再掲載を行いますのでご了承下さい。

次回、第14回紀の川流域委員会は、3月前半に和歌山市で開催される予定です。詳細は、決定次第ホームページに掲載します。

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