―平成 20年度―

■紀の川大堰関連魚道調査・速報(8月)

1.調査実施内容 表 1調査実施内容

左岸 右岸
調査実施日 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道人工河川式魚道 階段式魚道 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道
平成 20年 8月 28日閉鎖
平成 20年 8月 29日閉鎖

注)デニールボックス付バーチカルスロット式魚道は、減水のため 8月 5日に閉鎖された。 注)調査時間は7:00~21:00である。

2.調査方法
●遡上魚調査 魚道の出口付近(上流端)に箱型トラップを設置して、遡上魚を捕獲し、魚種や遡上数を把握した。 なお、調査にあたっては、遡上を完全に妨げないように魚道の 1/3を開放し、目視調査によって遡上数の補正を行った。また、捕獲した個体は、調査後速やかに放流した。
●魚道周辺の魚介類調査 投網・タモ網・カニカゴを用いて、魚道入口および中間付近にみられる魚介類の把握を行った。

3.調査結果 確認された魚介類の個体数および種数について、各魚道の内訳を表 2に、一覧を表 3に示す。また、アユ遡上数の今年度の変化を図 1に示す。

●魚道周辺で確認された魚介類は合計 19科 45種で、うち遡上した魚介類は合計 6科 20種であった。
●遡上が確認された魚介類は 1698個体で、そのうち最も多く遡上したオイカワは 439個体と、全体の約26%を占めた。
●アユの遡上確認は、左右岸とも各 1個体ずつで、いずれも階段式魚道であった。
●重要種としては、ウナギ(環境省:情報不足)、ゲンゴロウブナ(環境省:絶滅危惧ⅠB類)、ハス(環境省:絶滅危惧Ⅱ類)、メダカ(環境省:絶滅危惧Ⅱ類、和歌山県:準絶滅危惧)、オオヨシノボリ(和歌山県:学術的重要)、の計 5種が確認された。ただし、ゲンゴロウブナは本来琵琶湖原産であり、移植放流による個体の可能性もある。
●外来種はタイリクバラタナゴ、ブルーギル、オオクチバス(ブラックバス)、カムルチーの計 4種が確認された。

表 2各魚道にて確認された魚介類の個体数および種数

左岸 右岸
デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道人工河川式魚道 階段式魚道
個体数 779(523) 570(326)622(128) 368(190)
種数 28(11) 22(13) 29(13) 16(7)

注)( )内は、箱型トラップおよび目視により遡上が確認された魚介類の個体数

(個体数600 500 400 300 200 100 0 4月5月6月7月8月

図 1アユ遡上数の変化(今年度)

4.各魚道の状況

デニールボックス付
バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道
(閉鎖中)

表3 魚道およびその周辺で確認された魚介類の一覧(8月)

区分科名種名生活型重要種外来種左岸右岸
デニールボックス付バーチカルスロット式魚道人工河川式魚道階段式魚道デニールボックス付バーチカルスロット式魚道人工河川式魚道階段式魚道
1魚類ウナギウナギ--3 1 --3
2ニシンニシン科--135 --32
3コイコイ--1 1 (1) --1
4ゲンゴロウブナ----4 (1)
5ギンブナ--1 (1) --6 (1)
6タイリクバラタナゴ----14
7ハス--124 (119) 27 (24) --10 (4) 14 (6)
8オイカワウグイモツゴ淡 回 淡 ------322 (318) 1 (1) 2 (2) 40 (40) 1 (1) ------130 (55) 9 42 (26)
9
10
11タモロコ----7 (1)
12カマツカ--6 (4) 7 (7) --14 (8)
13ニゴイ属--1 (1) --2 (1)
14コウライモロコ--79 (4) 33 (33) --43 (5) 106 (103)
スゴモロコ属--51 (46) 188 (154) --85 (38) 73 (38)
コイ科 ---17 (17) 41 (41) --
15ドジョウドジョウ--1 --10
16アユアユ--1 (1) --1 (1)
17メダカメダカ--1 --38
18スズキスズキ--4 --
19シマイサキコトヒキ--7 --
20サンフィッシュブルーギル--1 (1) --27 (2)
21オオクチバス(ブラックバス)----2
22ヒイラギヒイラギ--1 --
23ハゼカワアナゴ----2 (1)
24ボウズハゼ--2 (1) 1 (1) --
25ウロハゼ--1 1 --
26マハゼ--3 --
27ヒナハゼ--2 --3
28ゴクラクハゼ--24 4 (4) --15 (1) 1 (1)
29シマヨシノボリ--38 --6 (1) 3 (2)
30オオヨシノボリ--1 --
31ヌマチチブ--14 --2
チチブ属--1 --
ハゼ科 ---7 (2) 39 (5) --2 (2) 4
32タイワンドジョウカムルチー----1
33フグクサフグ--1 --
不明不明 ---9 (9) --
34エビカニ貝類アマオブネガイイシマキガイ--7 7 --15
35タニシヒメタニシ----1
36シジミシジミ属 ---7 --4
37ヌマエビミゾレヌマエビ--6 --124
38ミナミヌマエビ----8
39テナガエビミナミテナガエビ--23 (3) 6 (1) --1 (1) 12
40ヒラテテナガエビ--7 3 (1) --6 6 (2)
41テナガエビ--3 3 --7 2
4243スジエビモドキ----10
テナガエビ科 ---5 (1) 8 --31 (6) 38 (11)
イワガニクロベンケイガニ--1 --2
44モクズガニ--15 (3) 2 (2) --7 3
45タイワンヒライソモドキ----1
合計個体数--779 (523) 570 (326) --622 (128) 368 (190)
合計種数5 4 --28 (11) 22 (13) --29 (13) 16 (7)

(注1)生活型 淡:淡水魚、海:汽水・海水魚、回:回遊魚、-:生態が詳しく解明されていない種や上位の分類群(注2)( )内は、箱型トラップ及び目視により遡上が確認された魚介類の個体数(注3)種まで同定できなかったものについては、同科または同属で種まで確認されたものがいない場合、1種として計上(注4)網掛けは、回遊魚であることを示す(注5)不明種は、目視観察時に同定不可能であった個体