―平成 20年度―

■紀の川大堰関連魚道調査・速報(7月)

1.調査実施内容 表 1調査実施内容

左岸 右岸
調査実施日 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道
平成 20年 7月 17日
平成 20年7月18日

注)調査時間は7:00~21:00である。

2.調査方法
●遡上魚調査 魚道の出口付近(上流端)に箱型トラップを設置して、遡上魚を捕獲し、魚種や遡上数を把握した。 なお、調査にあたっては、遡上を完全に妨げないように魚道の 1/3を開放し、目視調査によって遡上数の補正を行った。また、捕獲した個体は、調査後速やかに放流した。
●魚道周辺の魚介類調査 投網・タモ網・カニカゴを用いて、魚道入口および中間付近にみられる魚介類の把握を行った。

3.調査結果 確認された魚介類の個体数および種数について、各魚道の内訳を表 2に、一覧を表 3に示す。また、アユ遡上数の今年度の変化を図 1に示す。

●魚道周辺で確認された魚介類は合計 22科 48種で、うち遡上した魚介類は合計 9科 21種であった。
●遡上が確認された魚介類は908個体で、そのうち最も多く遡上したコウライモロコは398個体と、全体の約44%を占めた。
●アユの遡上数は 26個体で、今年度の最大数を記録した 5月の 1003個体に対して、2.9%と大幅に減少した。
●重要種としては、ウナギ(環境省:情報不足)、ゲンゴロウブナ(環境省:絶滅危惧ⅠB類)、ハス(環境省:絶滅危惧Ⅱ類)、アブラハヤ(和歌山県:学術的重要)、メダカ(環境省:絶滅危惧Ⅱ類、和歌山県:準絶滅危惧)の計 5種が確認された。ただし、ゲンゴロウブナは本来琵琶湖原産であり、移植放流による個体の可能性もある。
●外来種はオオクチバス(ブラックバス)、スクミリンゴガイの計 2種が確認された。

表 2各魚道にて確認された魚介類の個体数および種数

左岸 右岸
デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道
個体数 34(10) 614(462) 129(50) 78(42) 464(245) 328(99)
種数 9(6) 31(15) 20(9) 16(11) 30(8) 22(10)

注)( )内は、箱型トラップおよび目視により遡上が確認された魚介類の個体数

(個体数)600500 400 300 200 100 0 4月5月6月7月

図 1アユ遡上数の変化(今年度)

  1. 各魚道の状況
  2. その他の状況
転倒式魚道(左岸)の 箱型トラップ採捕状況 点検のために閉じられた
壁面を登るウナギ 左岸フローティング式 11:00 呼び水水路(右岸)

表3 魚道およびその周辺で確認された魚介類の一覧(7月)

区分 科名 種名 生活型 重要種 外来種 左岸 右岸
デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道 デニールボックス付バーチカルスロット式魚道 人工河川式魚道 階段式魚道
1 魚類 ウナギ ウナギ 1 2 (1) 4 2 2
2 コイ コイ 1 (1) 3 (1) 1 (1) 24 (2)
3 ゲンゴロウブナ 1 (1)
45 ギンブナ 2 (2) 9 3 (1)
フナ属 1 (1) 6
ハス 2 (1) 1
6 オイカワ 4 (3) 7 (7) 4 (2) 42 (40)
7 アブラハヤウグイモツゴ 淡 回 1 1 2 (2) 1 (1) 2 1 3
8
9
10 タモロコ 6
11 カマツカ 3 (2)
12 ニゴイ属 6 (5) 1 (1) 14 (6) 2 (2)
1314 コウライモロコ 1 (1) 332 (317) 2 (2) 12 (12) 61 (57) 12 (9)
コイ科 - 3 (3) 4 (1)
ドジョウ ドジョウ 3
15 ギギ ギギ 1
16 ナマズ ナマズ 1
17 アユ アユ 2 (2) 14 (7) 9 (9) 2 (2) 4 (4) 2 (2)
18 メダカ メダカ 18
19 スズキ スズキ 6 3 (3) 3
20 ユゴイ ユゴイ 2 (2)
21 サンフィッシュ オオクチバス(ブラックバス) 1 2
22 アジ ギンガメアジ属 1
23 ヒイラギ ヒイラギ 1
2425 ボラ ボラ 5 (3) 2 (1) 1
ボラ科 1 (1)
ハゼ カワアナゴ 3 (1) 1 1
26 ボウズハゼ 13 (2) 4 (4)
27 ウロハゼ 4 1
28 マハゼ 2 4
29 ヒメハゼ 3 3
30 ヒナハゼ 1 2
31 ゴクラクハゼ 2 (2) 29 (18) 12 (3) 5 (5) 36 (18) 18 (15)
323334 シマヨシノボリ 8 (1) 1 (1)
ヨシノボリ属 - 13 6 (5) 35 (9) 13 (5) 41 (40) 114 (12)
シモフリシマハゼ 1 (1) 8
シマハゼ類ヌマチチブチチブ属 海 回 - 4 18 1 5 2 5 1 24
ハゼ科 - 4 (1) 46 (46) 14 (12) 1 (1) 59 (59) 7 (7)
35 フグ クサフグ 9 2
不明 不明 - 21 (21) 1 (1)
36 エビカニ貝類 アマオブネガイ イシマキガイ 2 2 4 6 6 71
37 リンゴガイ スクミリンゴガイ 1
38 イシガイ ドブガイ 1
39 シジミ シジミ属 - 2 3
40 ヌマエビ ミゾレヌマエビミナミヌマエビ 回 淡 42 20
41
42 テナガエビ ミナミテナガエビ 2 (1) 16 (1) 2 (1) 1 (1) 1 5
43 ヒラテテナガエビ 9 9 1 6 2
44 テナガエビ 1 1
4546 スジエビモドキ 2 7 8 2
テナガエビ科 - 1 8 11 (1)
イワガニ クロベンケイガニモクズガニカクベンケイガニ 海 回 海 2 (2) 39 (24) 1 8 (7) 1 (1) 1 65 (54) 1 8 (4)
47
48
合計個体数 34 (10) 614 (462) 129 (50) 78 (42) 464 (245) 328 (99)
合計種数 5 2 9 (6) 31 (15) 20 (9) 16 (11) 30 (8) 22 (10)

(注1)生活型 淡:淡水魚、海:汽水・海水魚、回:回遊魚、-:生態が詳しく解明されていない種や上位の分類群(注2)( )内は、箱型トラップ及び目視により遡上が確認された魚介類の個体数(注3)種まで同定できなかったものについては、同科または同属で種まで確認されたものがいない場合、1種として計上(注4)網掛けは、回遊魚であることを示す(注5)不明種は、目視観察時に同定不可能であった個体