建設技術支援 Construction technical support
近畿技術事務所の技術の一覧、及び、作成したマニュアル等を紹介しています。
地質リスクマネジメント
1.地質リスクとは
わが国は、急峻な山岳地や、軟弱な地層が厚く堆積する沖積平野などで形成されているとともに、多くの活断層が分布しており、地質は極めて複雑です。このため、地質情報が十分に把握・評価されていなかったことにより、施工時における災害の発生や、構造物等の設計変更等が生じ、当初想定していた事業コストや工期が増大した事例があります。
このような、事業コストの増大や工期の延長等に結びつく可能性のある地形・地質や地下水、地盤等に起因する事業リスクのこと、また広義では地質上のリスクの存在を認識していないことを含め、「地質リスク」として定義しています。
2.地質リスク低減のための調査・設計マニュアル(案)の作成
公共事業の遂行にあたって、地質リスクを低減するためには、地質上のリスクを関係者が正しく認識し、構想・計画段階、調査・設計段階、施工段階、維持管理段階において適切に対応することが必要です。このように各事業段階において、適切な地質調査を行いその内容を設計に効果的かつ適切に活かすことにより、地質に起因する事業リスクを事業の各段階において低減させることを目的として、令和3年3月に改訂版マニュアルを作成しました。
3.地質リスクに関する統計的検討
一般的に、事業化前の段階においては、調査に必要な予算の制約や土地への立入りの制約等があり、十分な地質に関する調査が出来ません。
そこで、事業化時点で、事業を通して(施工の完了までに)発現する可能性のある、地質に起因する工事事費の増加幅を、統計的な手法を用いることにより推定するための検討を行います。
具体的には、工事事費の増加幅の大きな工種を絞り込み、過去の工事実績を収集・整理し、地域性または地質特性などの区分に応じて各工種の地質に起因する工事事費の増加幅を把握します。
また、得られた工事事費の増加幅の扱いについても検討を加えていきます。